さ行
サービス管理責任者
障害者自立支援法により、障がい者施設の人員配置基準では、事業所ごとに施設管理責任者、サービス管理責任者、サービス提供職員を配置することに改められた。
サービス管理責任者の業務内容は、個々の利用者について初期状態の把握(アセスメント)や個別支援計画の作成、定期的な評価(モニタリング)などの一連のサービス提供プロセス全般に関する責任を担うことであり、障がい者施設におけるサービスの質の向上を図ることを目的にしている。
サービス管理責任者は利用者へのサービス提供過程について他のサービス提供職員に対する技術的な助言や指導などの責務を担い、サービス提供職員に対してサービス内容の管理について指示・指導をおこなう。一方、施設管理責任者は、全職員および業務の一元的管理をして、規定を遵守させるための指揮命令をおこなうことで、両者は役割分担している。
サービス管理責任者になるには、障がい者の保健・医療・福祉・就労・教育の分野で直接支援や相談支援などの業務に3~10年の実務経験があり、「サービス管理責任者研修」および「相談支援従事者研修」の一部のカリキュラム(講義部分のみ)を受講・修了することが要件。
「大阪の社会福祉」平成21年7月号より
サービス提供責任者
サービス提供責任者は介護保険制度の訪問介護事業者が配置しなければならない職種。月間の延べサービス提供時間が概ね450時間以上ごとに1人、または訪問介護員10人ごとに1人のいずれかの基準で配置しなければならないことになっている。
サービス提供責任者の業務は、訪問介護計画の作成、利用者の状態・意向の把握、ケアマネジャーとの連携、ヘルパーに具体的な援助目標・内容を指示、ヘルパーの業務状況の把握、ヘルパーに対する指導などをおこなっている。ホームヘルプサービスの要(かなめ)というべき重要な役割を担っている。サービス提供責任者は訪問介護事業者の管理者との兼務が認められている。
サービス提供責任者になる要件としては、①介護福祉士、②訪問介護員養成研修1級課程修了者(ヘルパー1級)、③訪問介護員養成研修2級課程修了者(ヘルパー2級)で、実務経験が3年(540日)以上の者、④保健師、⑤看護師、⑥准看護師となっている。このサービス提供責任者は今まではすべて常勤専従と義務づけられていたが、平成21年度からの改正で、一部非常勤での配置が認められることになった。
「大阪の社会福祉」平成21年6月号より
在宅療養支援診療所
平成18年の医療法改正で、増大する医療費の抑制策として「在宅療養支援診療所」制度が新設された。入院治療の必要ない者については、病院での治療から、在宅医療を促進することを目的として、自宅でのターミナルケア(終末期ケア)や慢性疾患の療養などについて、在宅療養支援診療所は24時間体制で往診や訪問看護を実施する診療所のことである。全国で一万カ所設置することになっている。
在宅療養支援診療所になる要件としては、24時間連絡を受ける医師または看護職員を配置し、往診が可能な体制を確保し、24時間訪問看護の提供体制を確保し、これらについて患者や家族に文書で伝えているなどの要件を充足している診療所をいう。さらには、在宅療養患者の緊急入院を他の医療機関が受け入れる体制を確保していることや、介護保険制度での介護支援専門員(ケアマネジャー)などとの連携も要件となっている。これらを満たせば、社会保険事務局に届け出をし、支援診療所と認められる。
一般に、24時間開設していることから、コンビニ診療所と呼ばれている。こうした診療所を増やしていくために、在宅療養診療所が実施する在宅医療に対する診療報酬を優遇し、昨年四月の診療報酬改定で手厚い報酬がつけられた。
「大阪の社会福祉」平成20年10月号より
社会福祉主事
都道府県や市の福祉事務所で仕事をする際の任用資格である。
生活保護法、児童福祉法、母子及び寡婦福祉法、老人福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法に定める援護、育成、更生の措置に関する事務をおこなうことになっている。
この資格は、主として、資格取得のための研修を受講することで得る場合と、大学卒業の場合には、社会福祉に関する3科目以上の科目を履修していた場合に得られる。後者の資格者を「3科目主事」と揶揄されることがある。その後、昭和62年に社会福祉士制度が作られ、社会福祉士である者も社会福祉主事の任用資格が得られることになった。
社会福祉主事の制度は、昭和26年に作られたものであり、その当時の福祉事務所職員の専門性を確保するためのものであった。
その後、この制度は、社会福祉施設での生活指導員などの資格にも援用されるようになっている。
現実の福祉事務所では、ほとんど社会福祉専門職としての国家資格である社会福祉士が雇用されていない。
利用者の自立を支援したり、多くのサービス利用が措置から契約に移行する中で、職員の専門性を高めるために、社会福祉主事から社会福祉士に移行させていくことが課題となっている。
「大阪の社会福祉」平成20年11月号より
社会復帰調整官
社会復帰調整官は、平成15年に創設された「心神喪失者等医療観察法」第20条に規定されており、各都道府県にある保護観察所に配置されている国家公務員である。
心神喪失状態で他人に害を与えた精神障害者は刑事責任能力がないとされ、従来は不起訴・無罪処分とされていたが、「心神喪失者等医療観察法」により、犯罪の前提となった精神障害を改善し、再び同様の犯罪を繰り返すことなく社会復帰するために、必要な医療を受けてもらうこととなった。
退院の時期や治療の完了については裁判官と精神科医が判断し、退院後のケア・観察にあたるのが社会復帰調整官である。
社会復帰調整官は対象者と面接を通じて相談や助言をおこなったり、関係する人たちと相談しながら、対象者が地域で無事に生活していけるよう見守っていくソーシャルワーカーである。精神科医とも連携し、退院後も必要に応じて再入院を命じることができる。
社会復帰調整官になる要件としては、精神保健福祉士の資格を有するか、精神障害者の保健および福祉に関する高い専門的知識を有し、かつ、社会福祉士、保健師、看護師、作業療法士もしくは臨床心理士の資格を有することとなっている。
「大阪の社会福祉」平成22年2月号より
社会保障カード
年金の記録管理のずさんさが明るみになり、支給漏れの恐れも大きい。今後の年金記録に対する信頼を回復し、新たな年金記録管理体制を確立するために、昨年7月に、政府は、平成23年度をめどに「社会保障カード」(仮称)の導入を構想している。
このカードは、年金手帳だけでなく、健康保険証や介護保険証を兼ね備えたものとすることで、統一的なデータ管理をおこなうことを目的にしている。さらには、年金記録の通知や特定健康診査の結果の確認などに使うこととなっている。将来は、雇用保険など他の社会保障分野も対象にするなどとしている。そのため、一人一枚とし、個人情報保護の観点から、記載内容を他の者からガードするものとして、セキュリテイを確保することになっている。ただ、各制度の個人情報を統一する「社会保障番号」の導入については、今後の検討課題としている。
このカードについては、担当職員によるのぞき見や病歴などの情報漏れのリスクもあり、医療・介護も含めた一元管理について賛否両論がある。さらには、それが民間保険に加入する際に、提示することが条件になる恐れもある。国民の利便性を最重視したシステムづくりはもとより、情報管理を最大限に高めるよう、慎重な検討を必要としている。
「大阪の社会福祉」平成20年2月号より
社会リハビリテーション
1968年に世界保健機関(WHO)が定義付けたリハビリテーションでは、「医学的リハビリテーション」、「職業リハビリテーション」、「教育リハビリテーション」、「社会リハビリテーション」の4分野に分かれている。
社会リハビリテーションとは、障がいのある者が社会生活力を高めることを目的としたプロセスである。この社会生活力(ソーシャル ファンクショニング アビリティ)とは、障がいのある者が自らの障がいについて理解し、活用可能な社会資源を自ら利用することで積極的に社会参加し、自らの人生を自立的・主体的に自己選択して生きていく力のことである。こうした力を獲得するよう支援することが、社会リハビリテーションの特徴である。
そのため、社会リハビリテーションでは、社会生活力を高めるプログラムが開発され、それに基づいて支援されることになる。このプログラムは、障がい者の社会参加を促進し、エンパワメントを支援することで、利用者の生活の質(QOL)を高めることである。そのため、スタッフと障がい者がパートナーシップでもって実施することになり、医学モデルではなく、生活モデルによるアプローチであるという特徴がある。
「大阪の社会福祉」平成20年6月号より
(社)日本社会福祉士養成校協会
平成13年に創設され、社会福祉の担い手となる者を確保し、その者の資質の向上を図ることを社会的使命として、養成校での教育内容を充実させていくことと、社会福祉に関する研究開発や知識の普及に努めることで、国民福祉の増進に寄与することを目的に組織された。現在、4年制大学、一般養成施設、短期大学、専修学校、大学院合わせて、約270校が加盟している。
社会福祉士及び介護福祉士法改正により、社会福祉士養成校では実践能力のある社会福祉士となるよう、カリキュラム時間数を1050時間から1200時間に増やし、カリキュラムも実践的なものに変更されることになった。さらに、実習や演習については、具体的な内容が厚生労働省から提示され、大学においてもこの内容のもとで演習・実習をおこなうことになった。さらに、実習や演習の担当教員の要件として、一定の基準が設けられた。
この際に、日本社会福祉士養成校協会は、養成校と厚生労働省とのパイプ役となり、要件を満たしていない教員に対しては資格取得講習会を実施することになっている。同時に、社会福祉士制度の改正に基づき、職域の拡大や給与などの待遇の改善、施設長などへのキャリアパスの創設をめざして活動している。
「大阪の社会福祉」平成20年12月号より
主任介護支援専門員
主任介護支援専門員は、介護支援専門員のスーパービジョン能力を高めることを目的とする主任介護支援専門員研修を受講し、修了するとなれる。
この研修の対象は、以下の①~③のいずれかの条件を満たし、専門研修課程ⅠとⅡまたは更新研修を修了している者である。
①専任の介護支援専門員として通算して5年以上従事した者、 ②ケアマネジメントリーダー養成研修修了者か、日本ケアマネジメント学会の認定ケアマネジャーであり、専任期間が3年以上の者、③地域包括支援センターに配置されている者。研修時間は64時間(講義31 時間、演習33時間)であり、都道府県が上乗せ要件を設定することも可能になっている。
地域包括支援センターには保健師、社会福祉士と並んで、主任介護支援専門員が配置されることになっている。また、居宅介護支援事業者が介護報酬を5%から10%アップする特定事業者加算を取得する要件の1つに主任介護支援専門員の配置が義務づけられている。こうしたことから、主任介護支援専門員研修会への受講者が増えている。
主任介護支援専門員には、居宅介護支援事業者の職場内や生活圏域を中心とする地域社会の中で、介護支援専門員へのスーパービジョン活動が期待されている。
「大阪の社会福祉」平成23年4月号より
障害者自立支援法
障害者自立支援法は、障害者の地域生活と就労を促進することで、自立の支援を目的にしている。
具体的には、(1)サービス提供主体を市町村に一元化し、身体障害者、知的障害者、精神障害者にかかわらず、共通の福祉サービスを提供する、(2)働く意欲と能力のある障害者が企業などで働けるよう支援する、(3)地域の限られた社会資源を活用できるよう規制を緩和する、(4)支援の必要度合いに応じたサービス利用制度にし、利用に関する手続きや基準を透明化・明確化する、(5)食費などの実費負担や利用したサービスの量などや所得に応じた公平な自己負担を利用者に求め、国は福祉サービスなどの費用を義務負担とする、とした。
この法律では、身体障害者、知的障害者、精神障害者、障害児が給付対象となる。
提供されるサービスは、従来の施設・在宅福祉サービスに加え、自立支援医療や自立訓練・就労移行支援などの訓練等給付費である。
給付手続きについては、障害者や障害児の保護者が市町村などに申請し、市町村に設置される審査会の審査・判定に基づき、市町村から障害程度区分の認定と支給決定を受ける。 利用者がサービスを利用した場合、一割を自己負担するが、所得などに応じて負担に上限が設けられている。
また、この法律では、地域生活支援事業として、市町村又は都道府県が相談支援、移動支援、日常生活用具、手話通訳などの派遣、地域活動支援などを実施し、同時に市町村と都道府県は障害福祉計画を策定することになっている。
「大阪の社会福祉」平成18年3月号より
小規模多機能型施設
昨年4月に改正された介護保険法で創設されたもので、「通い」を中心として、要介護者の様態や希望に応じて、随時「訪問」や「泊まり」を組み合わせてサービス提供することで、中重度となっても在宅での生活が継続できるように支援するもの。これは地域密着型サービスの一つで、市町村に許認可権があり、原則的に当該市町村住民でなければ利用できない。また、地域住民も参加して運営していくために、利用者や地域住民も参加する運営協議会を設置することになっている。
一事業所当たりの登録者は25人程度、「通い」の上限は15人程度、「泊まり」については5~9人を上限として「通い」の利用者に限定されている。利用者は要介護者と要支援者であり、前者は小規模多機能型居宅介護、後者は介護予防小規模多機能型居宅介護という。人員配置については「通い」の利用者3人に対し職員1人、「訪問」に対応する職員1人、夜間については「泊まり」と訪問対応に2人(1人は宿直可)であり、介護支援専門員の配置が必要となっている。これが単体で設置されるだけでなく、認知症対応型共同生活介護、小規模な介護専用型の特定施設、小規模な介護老人福祉施設(サテライト特養)、有床診療所による介護療養型医療施設などの併設が想定されている。
「大阪の社会福祉」平成19年9月号より
少子化対策プラスワン
厚生労働省が2002年9月に「少子化対策プラスワン」を提案した。
ここでは、少子化対策は、(1)男性を含めた働き方の見直し、(2)地域における子育て支援、(3)社会保障における次世代支援、(4)子どもの社会性の向上や自立の促進の4つの柱に沿って、社会全体が一体となって総合的に取り組んでいくことが重要だとしている。
具体的には、以下のようなことが提案されている。経営者や職場の意識改革を推進し、短時間勤務や隔日勤務などの働き方の選択肢を広げる。育児休業取得率を男性10%、女性90%と目標値を設定し、企業が促進するための奨励をおこなう。週2~3日や午前や午後のみの保育事業や、保育ママ制度の弾力化や放課後児童クラブなどの充実を図る。地域における子育て支援サービスを推進し、子育て情報の発信などのネットワークづくりを導入する。子どもや子育て家庭に対して配慮した社会保障制度に改革していく。育英奨学金の充実や貸付制度による教育に伴う経済的負担の軽減をおこなう。
こうした少子化対策を具体的に検討するために、厚生労働省は2003年10月に「少子化対策推進本部」を設置した。
「大阪の社会福祉」平成16年1月号より
ジェノグラム(genogram)
ジェノグラムは、マックゴールドリックとジャーソンにより開発されたもので、少なくとも三世代の家族メンバーについての情報を図表に表示したもので、「世代関係図」「家族関係図」とも呼ばれる。家族や親子関係などの情緒的結びつき、利用者に重要な影響をおよぼした交通事故や火災などといったライフイベントなどを知ることができ、利用者個人を含む家族そのものを理解することに役立つ。
ジェノグラムは、核家族の家族を中心に拡大家族の構成員の属性(年齢、職業、住居、健康度など)、婚姻関係、親子関係などを図式化して作成していく。視覚的に分かりやすいように、文字は簡潔にするため、いくつかの記号がある。例えば、女性は○、男性は□、死亡は×、別居は/、離婚は//といった記号が使われる。
これは、ソーシャルワークでのアセスメントのツール(道具)のひとつとして使われることが多く、情報収集をもとに、支援計画を作成するために活用されることになる。同時に、支援後に評価する際にも、支援前との比較でジェノグラムが活用される場合がある。他の活用法として、利用者本人にジェノグラムを作成してもらい、それを自ら理解していくことを支援していく療法として活用する場合もある。
「大阪の社会福祉」平成21年8月号より
住所地特例
住所地特例は、介護保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度に設けられている。被保険者が住所地以外の市区町村に所在する施設に入所などをした場合、住所を移す前の市区町村が引き続き保険者となる特例のことである。これは、入所施設の所在する市町村が過度の財政負担を負うことのないようにするもの。
介護保険制度では、被保険者が入所により住所地が異動しても保険者は変更されない。介護保険法第13条に住所地特例対象施設として、介護保険制度が始まった時は、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護型医療療養病床の介護保険施設だけであった。その後、特定施設や養護老人ホームも住所地特例施設に追加された。
さらに、国民健康保険でも、居住していた市町村以外の介護老人福祉施設や児童福祉施設に入所した場合に、前住所の自治体が保険者になる。
また、一般の医療機関に1年以上の長期入院することで、住所を医療機関に移す場合でも、移す前の市区町村が被保険者となる。これは後期高齢者医療制度についても該当し、福祉施設への入所や長期入院などにより他の都道府県に住所を移す場合でも、住所を移す前の都道府県後期高齢者医療広域連合が被保険者になる。
「大阪の社会福祉」平成21年2月号より
准介護福祉士
今回成立した「改正社会福祉士及び介護福祉士法」に、明記された新たな資格。
今回の改正で、介護福祉士養成施設で必要な知識や技能を修得した者も国家試験を受験し、試験に合格しなければ、介護福祉士になれないことになった。それに伴い、この国家試験の受験資格を有しているが、介護福祉士の国家資格を得られなかった場合には、介護福祉士となるよう努めることを要件に、登録を受けて、准介護福祉士という名称で、介護をおこなうことができるようにした。
このような制度ができた背景は、フィリピンとの間での経済連携協定において現行制度を前提にして、介護福祉士の日本での受け入れが盛り込まれていたためである。また、養成施設卒業者がすべて介護福祉士資格を取得できなくなることでの経過措置の側面も有している。
これについては、介護の質を低下させ、介護の専門性を低めることになり、低賃金化を一層進めるおそれがあるといった批判的意見が強かった。そのため、改正された法律の附則で、公布後5年を目途として検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるとしている。
そのため、准介護福祉士という新たな資格が実際に発生する時点で、再度検討されることになる。
「大阪の社会福祉」平成20年1月号より
ジョブ・カード
「職業能力形成システム」(通称「ジョブ・カード制度」)は、平成20年度から「成長力底上げ戦略」で示された「人材能力戦略」の一環として新規に打ち出された政策であり、誰でもどこでも職業能力形成に参加でき、自らの能力が発揮できる社会の実現をめざすものである。とりわけ、職業能力形成の機会に恵まれなかった求職者(若年者や子育て後の女性、母子家庭の母親など)に対して、「職業能力形成プログラム」により、企業現場・教育機関等で実践的な職業訓練を受け、修了証を得て、求職活動に活用することを目的としている。
ジョブ・カードは「職業能力形成プログラム」の修了証のほか、職務経歴や教育訓練経歴、取得資格などの情報をまとめ、一冊のファイルにしたものである。これは、自らの職業能力・意識を整理できるキャリア形成支援ツールである。
求職者が、ハローワークなどのキャリア・コンサルティング(本人の適性などに応じた職業能力開発や職業選択についての相談サービス)を通じ、職務経歴や教育訓練歴、取得資格などの情報をまとめてジョブ・カードに記載する。その結果、自らの職業能力を客観的かつ具体的に提示し、公的な証明書として就職活動に活用できるとともに、求人企業とのマッチングを促進することができる。
「大阪の社会福祉」平成21年3月号より
自立支援給付
自立支援給付は、障害者自立支援法に規定されており、障がい者および障がい児が、その有する能力を活用し、自立した日常生活を営むことができるよう提供される障がい福祉サービスのこと。この給付には、①介護給付、②訓練等給付、③サービス利用計画作成費の支給、④自立支援医療費の支給、⑤補装具費の支給、の5つがある。
介護給付は、居宅介護、重度訪問介護、行動援護、療養支援、生活介護、児童デイサービス、短期入所、重度障害者等包括支援、共同生活介護、施設入所支援といった障がい福祉サービスに要する費用の給付。また訓練等給付は、自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、共同生活援助といった障がい福祉サービスに要する費用の給付をいう。
自立支援医療は、医療の種類ごとに市町村または都道府県の認定を受け、自立支援医療を受けるために必要な費用の9割を市町村が自立支援医療費として支給する制度。補装具の支給は、市区町村が心身の状況からみて補装具が必要であると認めた場合(一定以上の所得の者を除く)に、補装具の購入または修理に要する費用を市区町村が支給する制度。
自立支援給付以外の障がい福祉サービスとしては、利用者からの相談に応じ、必要な情報の提供および助言などをおこない、障がい者などの権利の擁護のために必要な援助をおこなう事業、手話通訳者などの派遣、日常生活用具の給付または貸与、障がい者などの移動を支援する事業などである地域生活支援事業がある。
「大阪の社会福祉」平成23年5月号より
自立支援プログラム
生活保護受給者が増加し多様化していることを受け、厚生労働省は被保護者の自立支援のために平成17年度から「自立支援プログラム」を導入した。このプログラムでは、被保護世帯をアセスメントし、自立支援の具体的内容や実施手順を内容とする世帯類型ごとの「個別支援プログラム」を定め、これに基づいて個々の被保護者に必要な支援をおこなう。
福祉事務所は、被保護者の自立・就労支援のために活用できる多様な支援メニューを整備し、被保護者の実情に応じた支援メニューを選び、個々の自立計画を作成・実施する。被保護者はこの自立計画に基づいて自立・就労に向けた取り組みをおこなう。福祉事務所は、個々の被保護者の自立支援プログラムを定期的に評価し、必要に応じて支援メニューを見直す。被保護者の取り組みが不十分な場合には、最終的に保護費の減額や保護の停廃止も考慮される。
就労経験の少ない若年者、社会的入院患者、多重債務者、ホームレス、高齢者といった対象者別の自立支援プログラムがある。
実例として、ハローワークに配置される就労支援コーディネーターの活用、担当ケースワーカーなどによる継続的できめ細かい進路・就労相談、授産施設、小規模作業所、社会適応訓練事業の活用、地域貢献活動への参加促進などがある。
このプログラムの特徴は、就労支援などに関する知識・経験を有する非常勤職員の活用、社会福祉法人や民間事業者などの協力、救護施設などの社会福祉施設との連携など、地域のさまざまな社会資源を活用することにある。
「大阪の社会福祉」平成18年5月号より
スクールソーシャルワーク
スクールソーシャルワークは、アメリカで20世紀初頭に誕生。学校をベースにしたソーシャルワークにより、子どもたちの生活をサポートする活動である。日本では、1980年代半ばに活動が始まり、2000年以降、香川県、大阪府、赤穂市などのいくつかの都道府県や市で実施されており、近年実施する自治体が急増している。1つの学校をベースに活動している場合と、都道府県や市町村に所属し、いくつかの学校に派遣されている場合とがある。
スクールソーシャルワーカーは、子どもの人格を尊重することを基本にして、子どもの問題状況を改善するために、子どもを取り巻くさまざまな人々(家族・教師・友人など)や地域の環境にも注目し、その関係を調整することを中心的な活動としている。具体的には、小学校や中学校の子どもの不登校、虐待、家族関係などの問題に対して、教師と連携しながら、生活支援の視点で活動している。校内でのカンファレンスをもとに、教師や地域の医療機関、児童相談所、行政機関、警察、家族などがそれぞれの役割を果たすよう支援し、子どもの代弁をする機能を果たすことで、問題の解決を図っていく。
スクールソーシャルワーカーなどを配置した場合、2007年度より文部科学省が補助金を出すようになった。今後の活動が期待されている。
「大阪の社会福祉」平成20年3月号より
ストレングス・モデル
ソーシャルワークやケアマネジメントにおいて、利用者や社会環境でのストレングス(強さ)を捉え、それを支援に活用していこうとする考え方で、1990年代以降、アメリカから広がってきた。
従来のソーシャルワークやケアマネジメントでは、利用者や社会環境のマイナス面を捉え、その改善や緩和に焦点を当てて支援をしてきた。その結果、問題をもった者として利用者を捉えることになり、利用者に対する尊厳の保持が難しく、同時に、利用者と援助者間との対等な関係が難しいとする反省から生まれてきた。理論的には、ソーシャルワークでは「医学モデル」から「生活モデル」への転換を意味する。
ストレングスとは、利用者のもっている意欲、能力、抱負、嗜好といったものである。家族や地域社会が有しているストレングスについても捉えることになる。こうしたストレングスをアセスメント情報として把握し、それらの情報を支援計画に活用することになる。この結果、利用者はエンパワメントと呼ばれる。新たに生じてきた問題を自分で解決していく力を獲得し、発揮できるようになるとされる。
「大阪の社会福祉」平成21年4月号より
スペシャルオリンピック
知的発達障害のある人の国際オリンピックのことで、1968年にシカゴで初めて開催され、当初はアメリカとカナダの2カ国のみの参加であったが、1988年に国際オリンピック委員会より「オリンピック」の名称の使用と活動が認められた。
2003年にアイルランドのダブリンで第11回夏季世界大会が開かれ、今年の2月26日から長野県で第8回目の冬季世界大会が開催されることになっている。この大会には約3000人の選手団が参加し、その内で日本選手団は過去最高の150名になる予定である。
1963年にケネディ大統領の妹ユーニス・ケネディ・シュライバーが自宅の庭を開放して「デイキャンプ」を始めたことに端を発して、発展してきた。知的発達障害者は参加することによって、目標と可能性に向かってベストを尽くす勇気を身につけ、身体的・知的・社会的・情緒的に成長することを、スペシャルオリンピックの目的にしている。同時に、一緒に参加する家族、コーチ、ボランティアは知的発達障害者への理解を深める機会にしていくことを狙いにしている。
「大阪の社会福祉」平成17年2月号より
セーフティ・ネット
「安全網」と訳されるが、語源はサーカスなどで落下防止のために張る網のことを指す語であったが、人々の社会的な安全を守る制度を意味するようになってきた。相対的に健康で文化的な生活水準を確保できる程度の水準の保障を社会が用意する働きのことをセーフティ・ネットと言い、経済的な危機に陥っても、最低限の安全を保障してくれる社会の制度や対策を意味している。
セーフティ・ネットを広義に捉えると、死亡、病気、引退、失業などの事象を扱うことになり、広範囲の所得保障政策ないしは福祉政策全般を指すことになる。狭義に捉える場合には、低所得者への所得保障政策に限定している。
広義のセーフティ・ネットの中心は、社会保障としての医療、年金、介護などといった社会保険制度、生活保護といった公的扶助制度、対人福祉サービス、公衆衛生などでもって構成されており、不測の事態に備えた諸制度全般を指すことになる。少子・高齢社会を迎え、このセーフティ・ネットが揺らぎだしており、万が一の場合に受け止めてくれるネットを再構築することが重要な課題となっている。
「大阪の社会福祉」平成16年8月号より
生活福祉資金貸付制度
低所得者世帯に生活費などを貸し付ける「生活福祉資金貸付制度」は、民生委員の世帯更生運動がきっかけで1955年にできた「世帯更生資金貸付制度」が前身。1990年に融資対象世帯の所得制限を緩和するなど、一部を改正した際に、現行の名称に変更。
国と都道府県からの補助金を原資にしており、都道府県社協が原資をプールしている。融資希望者は市町村社協や民生委員を介して申請をおこなうことになっている。金利は修学や療養・介護などを目的とした場合は無利子である。低所得者世帯の生業を目的とする場合は、280万円が貸付限度額であり、据え置き期間は原則1年となっている。
生活保護世帯が急増する一方で、生活福祉資金貸付制度の利用は低調であったことから、2009年10月に、以下の3点を改正。①10種類あった融資の種類を総合支援資金、福祉資金、教育支援資金、不動産担保型生活資金に整理し、総合支援資金は失業や減収などにより生活困窮している人に対応、②連帯保証人を確保できない人にも、貸付できるようにしたこと、③原則年3%であった金利を、連帯保証人を確保した場合には無利子、それ以外でも1・5%に引き下げたこと、である。
この改正により、生活福祉資金貸付制度がボーダーライン層のセーフティネットのひとつとなることが期待される。
「大阪の社会福祉」平成22年12月号より
世界アルツハイマーデー
1994年にイギリスのエジンバラ市で開催された国際アルツハイマー病協会の第10回国際会議で、9月21日を「世界アルツハイマーデー」と定めた。
この日の設定は、「私たちは、このような患者と家族に対して、理解をもって生活の質の権利を擁護すべき支援をする」、「私たちは、アルツハイマー病および関連の諸疾患に関する世界的啓蒙の普及を図ると共に、地球規模での理解と把握につとめ、患者と家族への支援を推進するために努力し働きかける」という宣言のもとでなされた。
この宣言には世界保健機関(WHO)の後援を受け、同協会の会長と議長が署名し、WHOの精神保健局員も署名に参加している。
毎年、70以上の国と地域で、認知症の人を抱える家族団体などが、認知症に関する人々の理解を深めたり、認知症の人や介護者を支援する活動をおこなっている。
日本でも、認知症の人と家族の会が中心になり、多くの地域で啓発活動をおこなっている。
こうした活動の背景には、認知症に対する病気としての社会の認識が低く、専門医から治療を受けることが遅れがちであることがある。
「大阪の社会福祉」平成22年9月号より
ソーシャル・インクルージョン
EU諸国での近年社会福祉を進めていく上での基本理念であり、ソーシャル・エクスクルージョン(社会的排除)と対をなす用語。
社会的弱者と言われる少数者や貧困者・失業者を地域社会や制度から排除するのではなく、地域社会の構成員として包み込み、「共に生きる社会」を目指すことである。その実現に向けて、公的扶助だけでなく、職業訓練や就労機会の提供などが総合的に実施されることが必要になる。
この考えはイギリスやフランスから日本に入ってきたものである。イギリスでは、移民などの一定の貧困地域を対象にして、経済生活の保障と同時に就労支援を実施している。フランスでは、参入最低限所得法により、社会から排除している移民などの失業者に最低限所得を保障しながら、社会的・職業的参入を図ることが実施されている。こうして、彼らをソーシャル・インクルージョンすることを目的にしている。
日本では、この用語は平成12年12月に厚生省(当時)の「社会的な援護を要する人々に対する社会福祉のあり方に関する検討会」が提出した報告書の中で始めて公的に示された。その後、生活保護受給者やホームレス対策などで、この理念が具体的に進められようとしている。
「大阪の社会福祉」平成17年9月号より
ソシオグラム(sociogram)
ソシオグラムはハートフォードが1971年に開発したもので、グループの成員間の関係を簡潔に記述した図式である。こうした図式は集団・組織を支援するソーシャルワークや集団療法で活用される。通常はソーシャルワーカーが観察に基づいてソシオグラムを記述するが、その際、集団内の個々の成員間だけでなく、ソーシャルワーカーも含めた関係を図示することになる。
ここでは、図式を見やすくするため、簡略化される記号が使われる。例えば男は△、女は○、矢印も→と←→の両方があり、(+)が支援的な関係、(-)がストレスフルな関係を示している。実線が強い関係、波線が弱い関係を示す。これらの記号や線を使うことで、集団・組織内の関係が一見して捉えることができる。
ソシオグラムは、アセスメント・ツールのひとつであり、集団・組織内の関係を把握するために使われる。これをもとに、集団・組織の課題を明らかにし、支援計画が作成される。支援実施の評価においても、集団・組織の変化を捉えるため、ソシオグラムが使われる場合がある。ソーシャルワーカーと集団・組織の成員がソシオグラムを共有した場合、成員に不安感や敵対感が生じる可能性があり、慎重な対応が求められる。
「大阪の社会福祉」平成21年9月号より
尊厳死
尊厳死とは、人間個人の人格や人間性の尊厳を保って死を迎える、または迎えさせること。安楽死は末期患者の意思のもと、医療行為でもって死なせることであり、尊厳死とは根本的に異なる。
この考えは、延命治療により人間の尊厳を冒しかねない医療よりも、短くても生き生きとした生活を可能にする医療を求めるようになってきたことにある。
日本にも、尊厳死協会が昭和51年に発足し、現在、会員は約10万6000人。 ただ、法的に尊厳死を認める法律はなく、法制化を求めて国に請願を提出している。 医療現場では、医師が延命治療を中止することと、医療行為で死なせる安楽死との境界が不明瞭のため、尊厳死について臨床上の基準がなく、混乱が生じているのが現実である。 海外では、尊厳死についての法制化は1976年にアメリカのカリフォルニア州が最初である。最近、オランダ、ベルギー、スイスでは、安楽死についても法的に認めるようになってきている。 尊厳死の問題はターミナル(終末期)ケアをいかに実施していくかにあり、本人の意向と家族や親族の思いを一致させることが不可欠である。尊厳死を可能にするためには医師のみならず、多くの専門職が関わるチーム医療が重要となる。
「大阪の社会福祉」平成16年12月号より