2021.04.16
地域をあげて「8050」と向き合う
「加賀屋2021フォーラム」が、3月14日(日)に住之江区のさざんか会館で開催されました。
テーマは「8050問題への注目」。8050(はちまるごーまる)問題とは、80代の親と50代のひきこもりの子が世帯単位で抱える課題のことです。
この企画の背景には悲しい出来事がありました。令和2年8月、加賀屋地域内で火災が発生。上記のような8050状態にある世帯が出火元と見られ、外出していた母は無事でしたが、息子は命を落としました。
付近では隣近所のつながりはあったものの、この世帯の状況に気づいていたのは一部でした。「もっと日頃から何かできなかっただろうか」「地域としてこの問題と向き合いたい」…その強い思いを受けて、区社協も一緒に企画を練り、今回の地域主体のフォーラムが実現しました。このテーマでの小地域単位の取組みは、市内でもあまり類を見ないものです。
表面化しづらく、孤立しやすい
まずは基調講演として、梅花女子大学の綾部貴子准教授が8050問題の背景、特徴を解説しました。
「50」の子の背景として、いじめや不登校、仕事になじめずに退職した過去の体験や、精神疾患により社会とのつながりが難しいことなどがあげられます。一方で「80」の親は、高齢になって身体・経済面も課題となりやすく、自分に何があった時にどうなるのかという不安に加え、家庭の状況を他者に知られたくないという思いを抱くことも多くあります。
もちろん個々の状況は多様ですが、世帯単位で見ると、子が現役世代であり、一人暮らし世帯でもないため、表面化しづらく、孤立しやすいという特徴があります。
これに対して私たちは何ができるのか。綾部先生は「それぞれが日頃から(予備軍の世帯も含めて)意識して生活してみる」「さまざまな相談窓口があることを知る」「地域のみ・専門機関のみ・行政のみで抱え込まない」などのポイントを示しました。
もしこの世帯を知っていたら…
休憩をはさんで午後からは、実際に火災があった地域の町会長が、その一部始終を報告。近くで地蔵盆の準備をしていた中で火災に気づき、近隣世帯の避難誘導、当該世帯の母の無事の確認、帰宅できなくなった世帯の会館での寝泊まりなど、地域ぐるみで対応した様が生々しく語られました。
他の方は早期の声かけで何とか助かりましたが、一人の命が失われました。「もしこの世帯を以前から知っていたらどんな関わりができていただろうか」…この地域の相談窓口を担当する人たちが登壇し、それぞれの役割と想定されるアプローチ方法を説明しました。
地域包括支援センターとブランチは「高齢者の総合相談窓口として、お母さんへの関わりから、世帯全体の課題を把握し、他の機関とも連携できれば」。
見守り相談室は「世代を問わずに支援できる。まずはお母さんから関わり、何度も地道に訪問して、息子さんも含めて信頼関係をつくりたい」。
くらしアシスト住之江(生活困窮者自立相談支援窓口)は「就労支援や家計改善などの支援メニューがあることが特徴。本人との関係づくりのために、絵はがきでメッセージを伝えることもある」。
それぞれに強みを持ちながらも、カバー範囲が重なる部分もあり、そこをのりしろとして日頃から柔軟に連携していることがうかがえました。
顔と名前が見える相談窓口に
綾部先生は、「今日は相談窓口担当者の顔写真と名前入りの相談窓口チラシが配付されています。ご覧ください。文字だけのチラシよりも、窓口の方の顔写真と名前入りの方が、安心しませんか。顔の見える関係づくりができたら…そう思って地域と相談窓口の方々が作成しました。もうひとつ、相談する時、ここで間違えていないかな…と迷うかもしれないけどけれど、相談窓口同士がつながっていて、最初の相談窓口を間違えても適切な機関にご案内しますから大丈夫ですよ」と、少しの気づきからの勇気を出して相談することを後押ししました。
相談機関の職員とともに、地域の立場から登壇した池田秀郎 民生委員長は、民生委員の役割や動きを伝えるとともに、「今回初めての試みだったが、“どこかに相談すればつながる”ことを確認できた。やはり信頼関係が大事。参加してくれたみなさんのアンケートの意見も参考にして、次につなげたい」と語りました。
今回のフォーラムを出発点として、同地域では今後も継続的にこうした場を設けることを考えているようです。
(担当:地域福祉課)