2020.08.26

【特集】 こころの叫びを受けとめて 自殺予防週間(9月10日~16日) ①


※本記事は大阪市社会福祉協議会ホームページの過去の掲載記事を転載しています。情報は記事掲載時点のものであること、また、リンク設定が一部無効となっている場合があることをご了承ください。

毎年、9月10日~16日は「自殺予防週間」です。自殺はなぜ起きてしまうのか。尊い命を自ら断つ自殺という行為は、悲しく、残念で、できるならば避けたいことです。自殺は、さまざまな要因が複雑に関係し、心理的に追い込まれた末に至る死であるものの、個人の問題として捉えるだでなく、時代の情勢や周りの環境の変化によって起こってくる社会的な問題でもあります。

今回は「死にたい」人の心の叫びをうけとめる電話相談事業をおこなう団体に、相談電話の現状や、「死にたい」という人との向き合い方についてお話をうかがいました。


自殺の現状と背景
年間2万人が自ら命を絶つ日本の自殺者は1998年から2011年までは年間3万人を超えていましたが、近年は減少傾向で、令和元年の自殺者数は 20,169人まで減り、10年連続で過去最少を更新しました。自殺者数を男女別にみると、男性は10年連続減少していますが、男性の自殺者数は、女性の約2・3倍となっています。

自殺者数減少の背景には、国が2006年に自殺防止と自殺未遂者や自殺者の遺族への支援を、国や自治体の責務として明記した自殺対策基本法が一定の効果を上げていると見られています。

◇若年層の自殺は深刻な課題
一方、自殺者数を年齢階級別でみると、30歳代は11年連続、40歳代、50歳代、60歳代は10年連続で減少しているのに対し、唯一19歳以下の自殺者が増加しており、改めて若年者の自殺増加が懸念されます。

若者の自殺に関しては、安心感の持てない家庭環境や虐待、そして不登校やいじめの問題といった要因に加え、ネットやスマホが普及した環境の中で、日常生活が不安定となっていることも影響しているのではないかと考えられます。

どの世代においても、自殺の危険因子となるのが、精神疾患です。特にうつなどの気分障がい、アルコールや薬物の乱用・依存、パーソナリティ障がいなどとの関連が指摘されています。

大阪市では、全体で毎年600人近い人たちが自ら命を絶ち、自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺死亡者数)は18・7(2018年)と政令指定都市の中では最も高い数値となっています。

大阪市こころの健康センターの取組み

▲大阪市こころの健康センター 左から、甲藤さん、金森さん、鈎さん

社会が多様化する中で、地域生活で起きる問題が複雑化・複合化し、さまざま要因が重なり、自殺につながる可能性があります。

大阪市こころの健康センターでは、こころの悩み電話相談のほか、ひきこもりに関することやアルコール依存症等の相談、精神に障がいがある方への社会参加の促進などに取り組んでいます。また、学生等を対象にゲートキーパー(命の門番)養成研修等も実施しています。

ゲートキーパーとは、自殺の危険を示すサインに気づき、適切な対応をおこなう(具体的には、悩んでいる人に気づき、声をかけ、傾聴して、必要な支援につなげ、見守る)人のことをいいます。精神保健福祉相談員、保健師、生活保護ケースワーカー、地域包括支援センター職員等を対象に、危機介入の研修も実施しています。このほか、自殺のハイリスクをかかえる自殺未遂者が再び自殺を図らないように、警察や医療機関、消防、保健福祉センター等が連携し、包括的な支援を進めています。

当センター・保健主幹の金森かずみさんは「自殺を考える人は、死にたいと生きたいが同時にあり、どうしたらいいかわからなくなってしまいます。そんな状況にある人の気持ちを紐解き、生きることにつなげるには、保健師をはじめ担当者それぞれがスキルアップしてチームで支援していきたいと考えています」と話します。年間の自殺者数が減ってきていますが、「助けて」と安心して言える社会をつくっていくために、行政、NPO等の団体、市民問わず、自殺を私たち一人ひとりの問題として考えていきたいものです。

▲こころの健康相談統一ダイヤル

▲新型コロナウイルス感染症に関するこころの悩み電話相談

 

※この特集は第1弾と第2弾の2部構成です。第2弾へは下記よりご覧いただけます。

第2弾:【特集】 こころの叫びを受けとめて 自殺予防週間(9月10日~16日)


本記事は、「大阪の社会福祉」第783号(令和2年8月発行)の掲載記事をもとに作成しています。

(担当:地域福祉課)