前号に続き、社協職員の座談会の様子を掲載します。居場所づくりのきっかけや場の持ち方はさまざまですが、社協として大切にしている視点や役割について、話を深めた会となりました。
―まず、各区社協での取組みを教えてください。
都島区社協・川原
「昨年度から、「カフェま~ぶる」というカフェ形式の居場所を不定期で開催しています。20代の青年から「作業所以外に人と交流できる場がないか」と相談を受けたのがきっかけです。不登校やひきこもり気味の方等が参加し、何気ない会話をしたり、さまざまな体験や交流ができる、社会とつながる場となっています。生活支援コーディネーターや地域支援担当などの他部署も一緒に、企画運営しています。」
此花区社協・鹿島
「生活困窮者自立相談支援窓口と見守り相談室で支援している中で、就労や障がい等のサービスにはつながらない中高年の方々、いわゆる制度の狭間と呼ばれる方々に社会とつながる場所が必要だと考えました。平成27年度から居場所づくりを始め、その後、参加者で「ひまわりの会」と名付けました。ジェンガや卓球台、折り紙等、いろんなものを準備して、その人達が好きなことをしてもらっています。城東区社協・山田 平成24年度から月1回、「不登校・ひきこもりの親の会」を運営しています。きっかけは8年前、社協事業が高齢者中心になっているという課題意識と、お子さんの不登校に悩んでいるという声があったことからでした。親御さんへのサポートや同じ境遇の方同士が話せる場をつくることで、親子の関わりにもいい影響があるのではないかと考えました。また、「発達障がいについて考える会」も運営しており、そちらは当事者・家族・支援者が参加しています。」
―居場所づくりで大切にしていることは?
此花区社協・鹿島
「参加する人が居心地よく来やすい場所にすることが一番大事だと思っています。港区社協の「居場所づくり会議」(本誌2月号掲載)で畑仕事が好評と聞いて、採り入れようと提案してみたのですが、参加者は「ジェンガをしたい」とおっしゃるので、今は、みんなで黙々とジェンガをやっています(笑)」
都島区社協・川原
「多様な課題を抱えたご家庭も多く、誕生日祝いやクリスマス、お正月などの季節の催しを、経験することなく育つ方もあります。こども時代にそのような機会のなかった人も、ここで人と関わりながら社会経験を積んで、人生の中で楽しいと思えることを一緒にやっていきたいと思っています。」
城東区社協・山田
「参加者同士が心を許し、安心して話せる空間が大切なので、ひきこもり当事者、家族、支援に関わる専門職や経験者など参加者を限定しています。ときには、悩みを打ち明けながら感極まって涙されることもありますね。」
―続ける中での気づきは?
此花区社協・鹿島
「支援が進まなくてもつながり続けることが大事。毎回、ジェンガが終わったら解散!みたいな感じでしたが、ある時、参加者の一人が「高齢のお母さんが心配で、自分も自立を考えている」という気持ちを初めて話してくれました。この5年間、月1回、顔を合わせるうちに、職員との距離が近づき、安心できる場所になったのではないでしょうか。緊急事態宣言で休止中も、再開をとても楽しみにされていたと聞いて、改めてこの場の必要性を感じました。」
城東区社協・森
「社協に入職して1年目ですが、担当する中で、悩みのある方が身近にたくさんいらっしゃることを実感しました。同時に、悩みを共有し、共感する場所の大切さに改めて気づきました。」
城東区社協・山田
「支援の必要な人が、まだ多くいらっしゃるだろうと感じています。コロナ禍の今、不登校の子が増えてきていますし、発達障がいのお子さんやその親御さんも、家の中で大変な想いでいらっしゃるでしょう。」
都島区社協・川原
「「カフェま~ぶる」を続け、また、さまざまな相談を受ける中で感じるのは、抱えている課題をたどれば、その方の生育歴での課題に行き着くことが多いということ。いわゆる8050世帯や虐待等の深刻な状態になる前に、もっと早期に支援ができていたら、その人たちの人生ももしかしたら違っていたのではないかと思うこともあります。」
―場の運営では、どんな人たちと協力していますか?
此花区社協・鹿島
「今は社協が主体ですが、今後は他の専門機関等、いろんな人を巻き込んで広げていきたいと思っています。ぜひ、他区のお話をお聞きしたいです。」
城東区社協・山田
「毎回、協力者として来ていただいているのは、こどもが以前に不登校だった親御さん、発達障がいに詳しい臨床心理士の方ですね。このほか、保健福祉センターや家庭児童相談室の担当者、大学の先
生に参加していただくこともありました。支援者が入るほうが、場がより充実すると感じています。」
都島区社協・川原
「コミュニケーションが難しい方や専門的な関わりが必要とされる方も多く、区社協が中心となって運営、対応をしています。コンビニの店長や神社の宮司なども、地域の課題や社協の「地域で安心できる交流の場を立ちあげたい」という思いに共感し、会場提供やカフェメニューでコラボしてくださっています。コンビニの店長は「声かけ訓練」にもご参加くださり、現在強力な味方となっています。また、みなさまにご協力いただく中で「参加者に、地域に安心できる大人がいることを知ってもらいたい」という熱い想いをもってくださっています。」
―どのような広報をされましたか?
都島区社協・川原
「来てほしい方に関わっている支援者から個別に声をかけるほか、学校用のチラシをつくり呼びかけました。対象を広げ過ぎると、本来の来てほしい人が参加しにくくなってしまいます。かといって、そこを強調するとレッテル貼りになってしまう気がして…。こちらでは「学校以外の居場所を」といった表現をしましたが、「特別感」を出さずに必要な方に情報をどう届けるかは難しいところです。」
此花区社協・鹿島
「こちらもチラシをつくる上で、相当悩みました。ひまわりの会は「誰でも気軽に参加できる場」であり、一緒にいる場を共有する「無理に交流しなくてもいい場」でもあります。決まったことをみんなでするだけでなく、話をしたくなければ横で本を読んでいて
もいいです、といったことも伝えました。」
城東区社協・山田
「立上げの時は、各中学校の協力を得て、全校生徒に「不登校・ひきこもり」に関する講演会のチラシで周知しました。その後は、ネット検索でホームページを見て区外や県外からいらっしゃる方が増えています。」
―社協の役割はどんなところにあると考えますか?
都島区社協・川原
「生きた現場をしっかりと見ていくことが重要だと考えます。そして、制度やつながりから取りこぼされる人たちをどのようにすくい上げるのか。地域住民のみなさんと一緒に、その仕組みづくりをやっていきたい。」
城東区社協・山田
「課題の把握から解決に至るまで、一貫して取り組む役割があると思います。悩みを直接聞ける場、支援者が集う場をつくることも大切です。さまざまな支援者と協働していく中で、新たに必要な活動が見つけられたらいいなと思います。」
此花区社協・鹿島
「一つは、課題を抱え、制度につながりづらい方の支援をつなぐ役割です。つなげる支援がなければ、それを創るのも社協だと思います。もう一つの役割は、住民への理解を広げることです。生活のしづらさを感じている人の困りごとを地域で考えられるように支援する。その積み重ねが「誰もが住みやすいまちづくり」になると思うので、これからも力を入れたいです。」
―最後に一言お願いします。
此花区社協・鹿島
「住民や関係機関等への啓発の機会として、“ひきこもり”をテーマに研修などを企画し、いろんな団体と協力してひきこもりの方を支援する活動をおこなおうと思っています。」
都島区社協・川原
「コロナ禍で社会がより早く変化していく中で、地域の声を早く拾い、柔軟に、そして今、必要なタイミングで事業化することが大切だと思っています。当初の年間計画の中になくても、気づいた課題
に対して、社協の中で他部署と協力し、住民のみなさんとともにスピード感をもって進めていきたいです。」
城東区社協・森
「今日参加して、ひきこもりの方の居場所といっても、いろんな方法があることがわかりました。これからの支援に活かしていきたいです。」
城東区社協・山田
「地域のみなさんや支援者の理解を得ながら、求められる新たな支援活動を創り出したいと思っています。」
本記事は、「大阪の社会福祉」第790号(令和3年3月発行)の掲載記事をもとに作成しています。
(担当:地域福祉課)
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