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2024.02.15

地域福祉シンポジウム コロナ禍のその先へ —孤独・孤立や生活困窮の課題に地域・関係団体等と協働して取り組む—

市社協は、令和5年11月30日に大阪国際交流センターで「地域福祉シンポジウム」を開催し、地域活動者や社協、施設、行政職員など約100人が参加しました。本シンポジウムは平成27年度から市民・福祉関係者の方を対象に、地域における福祉活動の意義と可能性を考えることを目的として開催しています。
約3年にわたる新型コロナウイルス感染症の影響から、「孤独・孤立」「生活困窮」など、さまざまな背景をもつ方々の問題が一層顕著となりました。そうした方々を見つけ、問題がより深刻となる前に、地域のなかでつながりをつくり支援をしていくこと、また、つながり続けることができる地域づくりが求められています。今回は、武庫川女子大学の松端(まつのはな)克文教授を講師に迎え、「地域福祉活動状況調査」の直近の結果や、鶴見区社協、淀川区社協それぞれの実践報告から、孤独・孤立や生活困窮の課題に対してどのように向き合い、取組みを展開していくかを考えました。

コロナ禍を経て多くの地域福祉活動が再開
まず、市社協から「地域福祉活動の推移に関する調査から見えてきたこととこれから」と題して報告しました。コロナ禍では多くの活動が中止や休止を余儀なくされましたが、令和5年9月末時点では、ふれあい喫茶や子育てサロン等の活動(2128団体)で、再開・実施している割合が88~95%となっており、新たに立ち上がった活動も多数あるという調査結果を共有し、孤独・孤立などの課題に対して地域福祉活動は重要な役割を果たしていることを伝えました。

つながりづくりは私たちづくり
松端先生は、講演で、「孤独・孤立、生きづらさについては、課題別に特定の支援があるわけではないため、制度中心ではなく、本人中心で考える必要がある。例えば、不登校やひきこもり状態にある人の数が増加傾向にあるなかで、社会のなかで起こっている問題にも関わらず、個人の問題と解釈されてしまう現状がある。自分だけでがんばらないといけないとしんどくなってしまう前に、人に助けを求めてもいい社会、周りの人も「どうしたの?」と声をかけられる社会をつくる必要があり、孤立状態にある人が社会でのつながりをどうつくっていくかが重要である」と話しました。
また、松端先生は「人が集まり会話ができる場所を意図的につくっていく必要がある」とも述べ、家庭でも職場でもない、第3の居場所が豊かにあることが重要であることや、私が私であること(存在)を肯定し、お互いが認め合えるコミュニティ(“私たち”と感じることができる集まり)が大切であるとまとめました。

▲武庫川女子大学 松端先生

実践報告①
◆鶴見区◆ 見守り相談室としての社会的に孤立している方への支援「関係が途切れないようにつながり続ける」

▲鶴見区社協 見守り相談室管理者  松本みき

「見守り相談室は、制度の狭間にある方やひきこもり状態にある方など、生活上で困りごとを抱えている方に寄り添いながら一緒に問題解決をめざす“個別支援”と、そこで感じた課題を「同じような問題を抱えた方が複数いるのではないか」と地域の課題に捉え直し、事業の展開や新たな資源を創り出していく“地域支援”を循環させた実践に取り組んでいます。そのなかで孤独や孤立、生活困窮等の課題を抱えた方に関わることがあります。相談の入口は、地域住民や家族などさまざまですが、訪問してもすぐには受け入れてもらえないこともよくあります。そのような状況でも、支援拒否も相手からのメッセージであり、関係性のひとつと考えて、まずは何気ない会話から始め、困りごとを話してもらえるように何度も訪問しています。相談者自身が客観的に、自分が困っていると気づくことが大切だと考えて、関係が途切れないように相談者の意思を尊重し、特性に合わせた関わり方をするなかで、少しずつ信頼関係を築き、相談者とともに歩みながら課題と向き合っています。個別の関わりだけでなく、同じような課題を持つ方やその家族が参加できる集まりなどをつくっていきたいと考えています。
地域住民からの相談や連絡により、相談者とつながれることが多いので、各地域の民生委員の会議等でも、見守り相談室の役割や近所に気になる人(ポストに新聞が溜まっている、最近姿を見かけなくなったなど)がいたら連絡をもらえるよう、具体的な事例も交えた周知活動をしており、さらに地域に向けて幅広く発信をしていきたいです。

■見守り相談室が関わる事例■
・50代(女性)の単身世帯。近隣からの連絡で訪問したところ衰弱しており救急車で搬送。周りに頼る人がいなかったが、 信頼関係を構築し、受診や障がい福祉サービス利用につながった。
・60代(男性)の単身世帯。離職後、週1回の買い物以外は自宅にいる生活をしていた。近隣からの連絡で関わり始め、当初は支援を拒否していたが、何度も訪問し、少しずつ心境を話してくれるようになり、滞っていた支払い手続き等を支援している。
・約10年ひきこもり状態にある息子のことで、母から相談があり、関係機関とも連携しながらサポートし、今は直接話してくれるまでになった。

実践報告②
◆淀川区◆ 
こどもレスキュー事業を通じて支援の幅を広げる「企業・団体・学生等の力をこどもたちへ」

▲淀川区社協 地域支援担当  前田歩美

「コロナ禍で生活に困窮する方からの相談が急増し、子育て世帯からも多くの困りごとが寄せられていた頃、区内の企業から「生活に困っているこどものために社会貢献がしたい」と寄附をいただいたことをきっかけに、淀川区社協として独自に「こどもレスキュー事業」を立ち上げ、今年で3年目を迎えました。
対象は区内在住で生活にお困りの中学生以下の子育て世帯とし、食料品やおむつの配付、大学生や元教師などのボランティアが講師となった学習支援をおこなっています。本事業を利用する前に職員が面談をして事情を伺い、困りごとを抱える世帯に継続して支援ができるようにしています。また、金銭的理由から、こどもを遊びにつれていけないなどの声があったことをきっかけに、バスツアーを企画し、みんなで遠足に行き、親子で楽しいひとときを過ごしてもらい親同士、子同士のつながりも生まれました。また今年度になってからは、学習支援に参加するこどもたちが自主的に企画を考えて実施できる機会があればと、月回「こどもカフェ」を実施しています。学生ボランティアがサポートし、こどもたちで話し合いながらメニューを考え、役割分担をして楽しく開催しています。本事業も開始から3年を迎え、たくさんの世帯と関わるなかで、本事業の「出口」を考えることも課題となっています。
スタートは一つの企業との関わりからでしたが、事業実施を通して本事業に賛同いただいたさまざまな団体や企業から寄附金や物品の提供、コラボ事業の実施に至りました。これからも継続的に事業実施していくために、本事業を広く発信して、賛同し協力してもらえるようにつながりを大切にしていきたいです」

■「こどもレスキュー事業」利用者の声■
・現在失業中でなかなか仕事も決まらずお金や生活の悩みで不安のなか、このような支援を受けることができ、助けていただいています。
・困っている方や頼る方がいない方々には(私たち親子も含め)本当にありがたいです。私も心身ともに元気になりましたらボランティアとして参加したいです。
・いつも家庭を支えていただきありがとうございます!コミュニケーションも増えて、いろいろがんばろうと思います。

困りごとを話せる関係性・場をつくる
2区社協からの実践報告に対し、松端先生は、「支援をする際には相手が自分のことを語ってくれることが大事。自分のことを客観的に見つめてもらえるような話ができる関係をつくる必要がある」「居場所とは、精神的な寄り処で、気兼ねなく困っていると言うことができるところである。そのためには、その活動に関わっている人が、“相談していい人”と認識してもらえるような親密な関係づくりが大切」などと伝えました。結びとして、「あたたかい関係が途切れることがないように、今後も継続して活動を展開していってほしい」と話しました。

 

≪シンポジウム参加者の声≫
・  松本さんの「支援拒否も関係の一つである」という言葉から、負のこともすべて負ではない、そう決めつけないことが大切だと感じました。
・  個別支援、地域支援の両輪から、コロナ禍で浮きぼりになった孤立への取組みを知ることができ、勉強になりました。
・  専門職だけでは解決できないことが多々あり、地域の力は大きいと改めて思います。
・  困っている時に困っていると声をあげられる社会、関係性が必要なのだと改めて思いました。

 

※本記事は、広報誌「大阪の社会福祉」令和6年1月号掲載記事に基づき作成しています。

お問合せ:大阪市鶴見区社会福祉協議会
     大阪市淀川区社会福祉協議会