2026.10.08
<西成区>オーダーメイドの支援で強みを活かし、可能性を伸ばすサポート ヒューマンインクルーシブセンター クリエバ
| 日本学生支援機構の令和7年度「大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査結果報告書」によると発達障がいのある学生数(大学生、短大生、高専生)は12,706人であり、年々増加傾向にあります。発達障害者支援法が施行された平成17年と比べると、法制度は整備され、学校や職場等での合理的配慮も進んでいますが、発達障がいに対する理解や制度、サービスなどの整備は充実しているとは言えません。 |
| 今回は平成28年に西成区で開設した社会福祉法人ヒューマンライツ福祉協会が運営する、こどもから大人まで幅広い世代の発達障がいや精神疾患のある方をサポートする施設であるヒューマンインクルーシブセンター クリエバ(以下、クリエバ)に事業内容や、利用者と関わるなかで大切にされていること、課題に感じていることについてお聞きしました。 |
![]() ▲クリエバの外観 |
| まずは、クリエバを開設したきっかけを教えてください。 |
| 開設した10年前はいまほど発達障がいに対する社会的理解は進んでおらず、特性が誤解されることで、本人の努力不足や親のしつけの問題として言われることもありました。そのなかで生きづらさを抱える本人や家族が安心して相談やサポートを受ける場が必要だという思いから始まりました。こどもから大人まで幅広い支援を展開し、一人ひとりの「好き」や「得意」を尊重することを大切に、早期支援を通じて、成長を支えてきました。また、クリエバには「多様な価値を創造(Create Value)する」という想いを込めています。 |
| 発達障がいのあるこどもたちへの支援はどのようなことをおこなっていますか。 |
| こどものライフステージに応じて支援し、大阪市から大阪市障がい児等療育支援事業を受託し、療育相談や保育園や学校等に訪問し日頃の療育のサポートなどをしています。また、ライフステージに合わせて、4つの施設でさまざまなプログラムに取り組んでいて、こどもの療育・発達支援では、こどもリハビリ、療育相談、少人数療育の3つを軸にこどもの好きを伸ばし、自信をつけ、やりたいことを引き出せるよう取り組んでいます。 |
| こどもリハビリでは特に低年齢児に特化してプログラムを実施しており、運動機能の発達が言葉や社会性など発達全般の土台になると考えています。例えば、1歳を過ぎると少しずつ歩けるようになり言葉を発するようになりますが、言葉を発するには運動機能が土台になっています。言葉が出にくいこどもは自分の要求を表現する際に大人の手を使って対象物に誘導する行動をとることがありますが、言葉で表現してもらいたいので遊びや音楽療法を通じて自然と言葉が出てくるように働きかけています。また、小学校を模した環境で行う就学準備プログラムでは、授業一コマ45分を想定した中で集中して座ってプログラムを受け、経験を通して「これやったことある!」と自信を持って小学校での授業に臨めるように支援しています。 |
![]() ▲プログラムルーム |
| 支援するなかで注力していることはありますか。 |
| 令和4年度から区内の保育園や幼稚園との連携強化に力を入れています。いまでは西成区内にある半分の施設と連携がとれています。大阪市障がい児等療育支援事業のなかで園や学校に訪問し、どのようなこどもがクリエバに通っており、どのように関わっているのかを伝えています。また、不登校支援の一環として、自宅へのアウトリーチ(訪問型)によるサポートもおこなっています。時間をかけて、こどもや保護者との信頼関係づくりから始まり、学校や医療との連携もおこなっています。 |
| 大人の発達障がい支援について教えてください。 |
| まずは専門的な心理検査やカウンセリングをおこない、困りごとや目標を把握し、オーダーメイドでサポートを提案します。利用者の多くが「コミュニケーションが苦手」「職場でうまくいかない」など対人関係の悩みを抱えていることが多いため、コミュニケーションスキルをロールプレイング形式で学ぶSST(ソーシャルスキルトレーニング)をおこなったり、運動を通じて、気分の安定を図るなど多角的なアプローチで支援しています。 |
| 目標は人それぞれですが、就労や仕事を続けて、納税するといったことを自分たちができていないことに対して、後ろめたさやプレッシャーを感じやすいです。そのため、「働きたいですか?」とは聞かず、「どのようにスキルアップをしたいですか?」「どのような生活を望みますか?」と聞くようにしています。利用者の思いや意向に寄り添い、サポートしています。 |
![]() ▲自分のペースでプラモデル作り |
| 相談支援やリハビリ以外にはどのようなことをしていますか。 |
| オフィスアシスタント業務やクリエバが運営する「わいわいカフェ」と「もっきんショップ」のカフェ運営業務など、利用者の強みを活かせる働く場を提供しています。カフェでは接客からドリンクづくり、野菜の栽培など幅広い内容があるため、接客が苦手な方でも取り組みやすく、お客様との会話を楽しまれる様子を見ることもできます。もっきんショップは近隣の「ゆ~とあいにしなり隣保館」の施設内で営業していますが、パンの販売を楽しみにされている方もいて、地域住民から直接「ありがとう」と感謝の言葉をいただける貴重な機会になっています。野菜の栽培はクリエバの屋上でおこなっており、一人でも作業することができ、月に1度なら来れるという方でも始めやすいです。 |
| また、SSTと並行して、クリエバで安心して過ごしてもらえるような居場所づくりに取り組んでいます。頻度は多くないですがおでかけしてリフレッシュしたり、共通の趣味を持つ人でサークル活動をおこなったりしています。 |
| 月に一度はみんなで懇親会をしています。発達障がいのある方は人間関係に悩んで孤立したり、他人との距離を保とうとする方が多い傾向にありますが同じ境遇の人とつながり、関わることで「安心して自分らしくいられる」と言ってもらえた時はとても嬉しかったです。 |
![]() ▲利用者の強みを活かせるカフェを運営 |
| さまざまな課題もあるかと思いますが、今後の展望はありますか。 |
| 発達障がいのことで困ったとき、悩んだときの相談先がまだまだ足りていないと思います。相談できる場所があっても、支援者が発達障がいについて理解が不十分であると「あなたは大丈夫」と帰されることもあります。大丈夫だと言われてしまうとほかに相談しなくなります。そこから安心して社会に馴染めれば問題はないですが、せっかく相談したのに対応してもらえない悲しさから、さらに孤立してしまいます。そのため、社会全体で発達障がいに対する理解を深めることが重要だと考えています。クリエバに来られる大人の方はこどもの頃に支援を受けたことがない方が多いので、「小さいときにこういう相談先を知っていたら自分はもっと変われていたのかな」とよく聞きます。昔はよく学校の先生に怒られていたこどもという認識であったかもしれませんが、それが生まれつきの特性や精神疾患かもしれないという認識を多くの人に持ってもらえるようになってほしいです。 |
| また、ライフステージの移行期に切れ目のない支援ができればと考えています。ステージがあがるにつれて、学校生活や習い事、遊びなどで利用する頻度が減少していくのですが、相談先が変わるたびに各機関や施設でアセスメントをおこなうため、過去の支援が引き継がれない課題があります。県によっては、本人からの同意を得て、これまでの経過を追える情報共有システムが構築されており、切れ目のない支援を受けることができることもあります。情報や記録のインフラを整えることでその方の一生を一貫して支援することができるようになればと願っています。 |
| 最後に、まだつながっていない方はとにかく一度電話をかけてほしいです。小さなことでも困っていることがあれば相談してください。「必要な時に頼れる場所」と言ってもらえるように努めていきたいです。 |
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| ※本記事は、広報誌「大阪の社会福祉」令和8年9月号掲載記事に基づき作成しています。 |
| お問い合せ:ヒューマンインクルーシブセンターHP |

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