2026.07.22

<中央区>言葉の壁を越え、心をつなぐ 「つながることばカフェ」が生み出す多文化共生の新たな居場所

 近年、大阪市の外国人住民数は急増し、現在では21万人を超え、全人口の約7.7%を占めています。特に中央区では交通の利便性の高さや住宅開発等により外国人住民数が急増しており、市内でも上位に入る規模に達しています。こうしたなか、令和8年5月25日に留学生と地域住民が言語や文化の枠組みを超えて交流する「つながることばカフェ」を中央区社協とファーストスタディ日本語学校、café  shade  tree の3者で初めて共催で実施しました。

 

▮活動の背景:留学生の「日常の場」を求めて
 今回の「つながることばカフェ」が立ち上がったきっかけは、中央区にある日本語学校 ファーストスタディに通う学生たちの思いでした。学生たちは日々、学校での勉強やアルバイトに励んでいますが、それ以外の場所で地域の人々と話をしたり、自由に集まれる場が限られているという課題を抱えていました。こうした現状を受け、日本語学校の講師らは、これまで「ワン・ワールド・フェスティバル」(国際協力の大切さを広く啓発するイベント)などの国際交流活動を通じて縁のあったボランティアグループ「ボラステぽっぽ」代表の石黒修いしぐろおさみさんに交流の場について相談し、そこから区社協を交えた協議を経て、今回のカフェの実施が実現しました。
  会場である café  shade   tree は社会福祉法人大阪府肢体不自由者協会が就労継続支援B型事業所として東成区で運営するカフェです。学校からも近く、取組みの趣旨に賛同いただいたことから、区をまたいでの実施となりました。

▲まずは自己紹介からスタート

 

▮自然な対話が生まれる交流の現場
 当日は、留学生12人と、区社協が運営するボランティアの企画部会や公式LINEなどの募集に応じた地域住民7人が参加しました。会場では、開始前からグループごとに自然と会話が始まるなど、和やかな雰囲気に包まれていました。
 交流プログラムは、ファーストスタディの脇夏葵なつき講師が進行を務め、ジェンガに見立てた色付きの割り箸を引き、その色に対応したテーマ(趣味、おすすめの曲、旅行の思い出など)について話すという「自己紹介ジェンガ」からスタートし、参加者たちはスマートフォンで自国の音楽を流したり、おすすめの場所を教えあったり、笑顔で交流を深めていました。
 続いておこなわれた「サイコロトーク」では、サイコロの目に「自国の有名な祭り」や「もし1週間休みがあったら」といったテーマが設定され、留学生は自国の文化を思い起こし、日本人参加者も日本の文化を見直すきっかけになりました。そのなかで「万博であなたの国のお祭りを見たよ」と、大阪・関西万博での体験を思い出しながら会話を楽しむ場面もありました。
 単なる情報交換にとどまらず、会話そのものを楽しむ姿勢も見られ、「ありがとう」を各国の言語でどう話すかを練習しあうなど、「外国人との交流」と聞いて身構えがちな言葉の壁を、楽しみながら飛び越える様子が印象的でした。

▲カードゲームは万国共通

▲サイコロトークで互いの文化を伝え合う

 

▮国を超えた文化の交流
 後半の文化体験では、日本の伝統行事である「こどもの日」が紹介されました。折り紙で「かぶと」を折りながら、日本人参加者が留学生に教えるだけでなく、留学生同士で教えあう姿も見られました。
 そして、交流の締めくくりには、留学生たちが持参した自国のお菓子とともに折り紙のかぶとの交換がおこなわれました。インドネシアのコーヒー味の飴やミャンマーのミルクティーなど、珍しいお菓子を前に会話が盛りあがります。日本人参加者からは、「大阪のおばちゃんはいつも飴ちゃん持ってるんやで。電車で席譲ってもらったら飴ちゃん渡すねん」と飴が手渡され、会場は大きな笑いに包まれました。

▲かぶとの折り紙で日本の文化を学ぶ

 

▮「居場所」としての意義と未来への展望
 区社協の小山実優地域支援担当主事は「最近は窓口にボランティアをしたいと相談に来る外国人が増えている」と話し、今後は防災などをテーマにした開催も視野に入れており、参加者の属性も子育て世帯や企業へと広げていきたいと語りました。
 今後も月1回程度のペースで継続して実施する予定で、「学校で受ける日本語のテストをみんなで解いてみたらどうだろう」、「バルーンアートのボランティアグループとのコラボもおもしろいかも」などアイデアは尽きません。
 また、今回の参加者は比較的日本語能力が高い学生が中心でしたが、「自信はないけれど参加してみたい」という日本語学習を始めたばかりの学生も多くいます。今後は、日本語能力に関わらず、誰もが気兼ねなく参加できる場へと発展させていくことが期待されています。石黒さんは「大きな夢かもしれないけれど、これが大阪市内全域にも展開できれば」と語ります。

 

▮地域に溶け込む「つながることば」
 会が終わる際、参加者たちは「どこかで会ったら声をかけてね!また会いましょう!」と言いあいながら、会場を後にしました。今回の「つながることばカフェ」で見られた、音楽や文化を介した自然なコミュニケーションは、カフェの扉を出た後も、地域のなかで交わされる「こんにちは」という挨拶に変わり、次は「日常のつながり」になるのではないでしょうか。
 

 

※本記事は、広報誌「大阪の社会福祉」令和8年7月号掲載記事に基づき作成しています。
お問い合せ:大阪市中央区社会福祉協議会