2025.04.17

参加者にとっても活動者にとっても心の拠り所②

近年、約3年にわたる新型コロナウイルス感染症の影響もあって、「孤独・孤立」「生活困窮」など、地域住民が抱える課題が複雑化・複合化し、さまざまな背景をもつ方々の問題が一層顕著となりつつあります。そうした方々を見つけ、問題がより深刻となる前に、つながりをつくり支援をしていくこと、また、つながり続けることができる居場所づくりが求められています。
今回は参加者にとっても活動者にとっても心の拠り所となっている活動を2つ取材しました。そのうちNPO法人Unityでの活動をここでは紹介します。もう一つの鶴見区での取組みはこちらからご覧ください。
高校生・大学生がつくる、小中学生の学びの場(NPO法人Unity)
 NPO法人Unityは、学習支援を通じたこどもの居場所団体で、現在鶴橋校と新大阪校の2拠点で無料学習塾を運営しています。鶴橋校が毎週日曜日、新大阪校が毎月第2土曜日に実施しており、各回小学生が5~6人、中学生が2~3人程度が参加しています。
 活動を担うのは高校生・大学生のメンバー約160人で、参加する小中学生にとっても、活動する高校生・大学生にとっても居場所となっています。
 今回は同法人理事長の目﨑敦也さんにインタビューしました。

▲理事長の目﨑さん

◎活動を始めたきっかけ、取組みを教えてください。
 大学生時代、初めは別のNPO法人で、一つの区でこどもの学習支援をしていましたが、困っているこどもはその区以外にも多くいることから、大阪市、府、さらに広い範囲で、さまざまなこどもの居場所をつくっていくことが絶対必要だと当時から考えていました。そこを少しでも具現化するために大学生の時に当団体を立ちあげ、令和5年に法人化しました。
 鶴橋校はレンタルスペースを運営する企業と思いが一致し、協力を得て、場所を提供していただいています。新大阪校は、東三国にあるこども食堂と提携し、実施しています。
◎どのような学習スタイルで実施していますか。
 小学生クラスは勉強したいものを各自持参し、わからないことがあれば手を挙げて質問できるフリースクールの形式で実施しています。中学生コースは個別指導のため、参加前にアプリから予約を入れ、本人の特徴や相性を考えて、学生ボランティア講師とマッチングしています。こうすることで、本当に聞きたい質問ができ、学習の合間の雑談でも、心に秘めていることや、悩みを打ち明けてもらいやすくなりました。
◎活動をするうえで大切にしていることはありますか。
 やはりコミュニケーションですね。参加しているこどもたちとはもちろん、活動している学生ともたくさん会話をすることで、活動者と一緒にこどもたちを導いていくという団結力を芽生えさせています。
 また、参加したこどもたちに勉強しなくても決して叱らないようにしています。「はよやりや」などと言わず、静かに見守って、こどもたちが自然に鉛筆を持った瞬間に「もしかして自分で時間見て、配分を決めてるの?すごいね」といった声かけで寄り添うようにしています。
◎Unityはどのような居場所となっていますか。
 支援している側が、実は支援されてる側にもなっていることがあります。参加者・活動者双方にとっての居場所となっており、それぞれに活動日を本当に楽しみにしています。
 活動メンバーのなかには、過去に不登校などの当事者だった人もいますが、自分だから伝えられることを自身の強みとして活躍しています。いろいろな経験、さまざまな人との出会いから成長につながる、そして心の拠り所となる居場所ではないかなと思います。
◎活動者を増やすための工夫はありますか。
 高校や大学の部活動・サークル等と提携し、継続的に来てもらう仕組みを作っているほか、「アクティボ」というサイトでも募集しています。活動者は、学校に行きながらのため、毎回必ずではなく、無理なく参加しています。嬉しいことに、人の確保で困ったことはまだありません。
◎現在力を入れていることや今後の展望について教えてください。
 小中学生が学習支援を受ける側で、それを支援するのが高校生と大学生。小中学生にとって年齢の近いお兄ちゃん・お姉ちゃんからよくしてもらったポジティブな体験が記憶に残り、自分たちが同じ年齢になった時に「自分もしてもらったし、ボランティアに行こうかな」という気持ちになって、次は支援する側に回るというサイクルを作れるよう活動しています。目の前の課題が精一杯ですぐに気づけなくて、ふりかえった時にふと助けられていたことに気づく時があると思います。
 今後に向けて、まだ出会えていない困っているこどもたちと出会うために、どのようにアプローチしていくかを試行錯誤しているところです。
 これからどんどん輪を広げていきたいなと思っていますが、Unityのメンバー全員が無給のボランティアということもあり、さらに企業や団体とタッグを組んでいくことが必要と考えています。まだまだ私たちは経験が少なく、わからないこともありますので、成長していけるよう引き続き、行動して学んでいきたいと思います。

※本記事は、広報誌「大阪の社会福祉」令和7年1月号に基づき作成しています。