2025.10.22
大学生の視点で被災地で学んだことを伝え、震災の教訓を未来へつなぐ ~ 大阪総合保育大学短期大学部の学生防災リーダーの取組み ~
| 大阪市東住吉区に位置する大阪総合保育大学短期大学部では、毎年4人の防災リーダーを選出して、宮城県へ行き、東日本大震災の教訓を学んでいます。行って終わりではなく、現地で感じたことや学んだことを大阪に持ち帰り、学生目線で備えを発信しています。 |
| 今回は、顧問である長橋幸恵先生と多田鈴子先生、学生防災リーダーとして活動している榎本涼風さん、竹原明美さん、後藤ななさん、柳瀬美羽さんに活動内容、活動への思い、今後の展開などについて、お聞きしました。 |
![]() ▲左から長橋先生、後藤さん、柳瀬さん、竹原さん、榎本さん、多田先生
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| はじめに、防災リーダーの活動に参加しようと思ったきっかけについて教えてください。 |
| 榎本 先生からお話を聞き、何でもやってみる精神なので、やってみようと思いました。また、防災について何も知らなかったですが、近年災害が多いことから、学んでおく必要があると思ったことも入った理由のひとつです。 |
| 竹原 友達から誘われたことと、私も防災について知らなかったので、大阪でも災害が起きた時のために、活動を通して学んだことを伝えていきたいと思い、参加することを決めました。 |
| 後藤 私も最初のきっかけは、友だちに誘われてです。私は保育コースで、先輩から保育などの対人援助職に就くなら、この活動を通して、コミュニケーション力のスキルや防災の知識を身につけることができ、将来役に立つと聞いて、参加しようと思いました。 |
| 柳瀬 先生たちからこの活動について聞き、防災について知ることで、防災にあまり関心がない方へ防災の必要性を伝えていきたいと思ったからです。 |
| 取組みについて教えてください。 |
| 長橋 学生防災リーダーの活動では、東日本大震災で津波の被害を大きく受けた宮城県の南三陸へ毎年行っています。南三陸311メモリアル、みやぎ東日本大震災津波伝承館、矢本はなぶさ幼稚園へ訪問し、当時の被害状況やどのように避難行動したかなど、震災を経験した方々の声を聞いたり、記録写真や映像の資料から、震災の教訓を学び、防災意識を高めています。 |
| また、語り部バスにも乗車し、ガイドの方から被災地で起きた出来事を詳しく説明していただきながら、震災遺構となっている公民館や旧中学校などに訪れ、津波の威力を肌で感じ、自然災害の恐ろしさを実感しています。 |
| 研修後は、東住吉区内の地域での活動(親子サロンや防災イベント等)や中学校での防災訓練、東住吉区社協がおこなう災害ボランティアセンターの開設・運営訓練などに参加し、防災の大切さを発信しています。 |
![]() ▲矢本はなぶさ幼稚園の職員の方から、震災による園の被害、状況などについて直接聞きました
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| 後藤 親子サロンでは、大体5~10組の親子が参加しており、そこで少し時間をいただいて私たちの活動や防災について説明しています。乳幼児が避難する時に使う誘導ロープ(一本のロープに乳幼児が握る丸い持ち手が付いている)体験などもしていますが、1回目は私たちも発表することに慣れていないことから反応があまりよくなく、落ち込みました。2回、3回といろいろな場所での発表経験を積み、最初に比べて全員上手くなっていると感じています。 |
| 榎本 地域の活動で発表した際に、参加していたおばあちゃんから、「シナリオの紙ばかり見て話すのではなく、聞いている人の顔を見て話した方がいい」と指摘を受け、全員で本当に落ち込みました(笑)。でも、あの経験のおかげで、発表がどんどんよくなっていると思います。 |
| 竹原 活動のたびにふりかえり会をして、どのように発表すれば、聞いてもらえるか、先生含めてみんなで考えました。 |
| また、発表をしているなかで、感じることは、防災について知らない、実際に災害を体験していない方が多く、南海トラフ巨大地震などのいざという時に備えてと言われても、なかなかイメージが沸かない、本当に起きるかもわからないため、油断している方が多いかなという印象です。 |
![]() ▲語り部バスで震災によって被害を受けた現地を訪問し、自然災害の恐ろしさを実感
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| 活動していてうれしかったことは何ですか。 |
| 柳瀬 緊張して人前で顔を見て話すことができませんでしたし、質問されたら答えられるかなどの不安も感じていました。今では、東住吉区社協がおこなっている災害ボランティアセンター開設訓練や地域活動の際に、何度も人前で話す経験をしたことから、慣れてきました。自分の成長を感じることができた時はうれしかったです。 |
| 後藤 地域の防災イベントや企業での研修会などの時に、「私たちが考える防災バッグ」と題し、防災バッグの備えを見直す機会として実施してみたところ、参加した方からたくさんの質問を受けることができて好評だった時です。さまざまな場所で発表した後に、参加した方から、「また来てほしい」ともいっていただけたこともうれしかったです。 |
| 先生方から見て防災リーダーの活動はどうですか。 |
| 長橋 東北にはもう10年近く行っていて、先方から声をかけていただけることもあります。毎年先輩から後輩へ思いを引き継げているため、この活動が応援される取組みになっているのだと感じています。 |
| 学生が地域などで発表すると、地域の高齢者の方々にとっては孫の世代にもなるので、震災の経験から発表の仕方まで、いろいろ教えてあげようと思っていただけます。これが歳の差がある学生から発信するよさだと思っています。最初は指摘を受けてなかなか落ち込んでいました(笑)。 |
| ただ、教えていただいたことで、発表について考える機会となり、ブラッシュアップし、地域の方々から「若い子が防災について考えてくれていて、安心できる」と言っていただけることもありました。また、この活動は、防災はもちろんですが、それ以外に活かせるスキルも身につく活動ですので、そこも魅力です。 |
| 多田 被災してから、復興までの現地の変化は行かないとわからないと思います。例年現地へ行っていますが、毎回違う気づきがあります。現地へ行って現地の方から、風景や資料などを見ながら、被害を受けた出来事を実際に聞くことで、肌で災害の恐ろしさを感じ、学びから防災意識を高めています。 |
| 初めは人前で話すことができなかったこどもたちが、東北へ行ったり、地域などで発表する回数を重ねるごとに成長し、堂々と発表している姿を見て、たくましくなっているなと感じています。卒業しても引き続きこの活動で学んだ防災を啓発してほしいと思っています。 |
![]() ▲東住吉区社協の災害ボランティアセンター開設運営訓練に運営側で参加 |
| 今後この防災リーダー活動はどうなっていってほしいと思いますか。 |
| 竹原 地域で発表している時に感じていることなのですが、参加者は、高齢者の方が多いので、一人ひとりの意識が地域の防災力を高めることからも、若い方にも参加してほしいなと思っています。 |
| この防災リーダー活動で現地に行けて、震災について聞くだけではなく、実際に見たことで、感じることがいくつかありました。学んだことを思い出として終わらせず、就職する職場でも引き続き伝えていきたいと思います。 |
| 榎本 まだまだ防災についてよく知らないという方が多いかと思うので、防災意識を高めるために、もっと防災について知ることができる機会を増やしていく必要があります。 |
| そして、私たちは令和8年3月をもって卒業するため、活動を次の学年へ引き継ぐことになりますが、私たちがいる間は一緒に活動先の開拓などをおこない、得たものを伝えたいと思います。私たちができなかったことを含め、ブラッシュアップして、この防災リーダー活動をよりよい活動へ発展させてもらえるよう、学生が主体的に活動していってほしいです。 |
▲インタビュー終了後の1枚 |
| ※本記事は、広報誌「大阪の社会福祉」令和7年9月号掲載記事に基づき作成しています。 |

つながる、一歩踏み出す。


