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地域福祉シンポジウム 開催レポート〈第2部〉

市社協では年1回、「地域福祉シンポジウム」を開催しています。今年度は、平成30年9月23日、大阪国際交流センターにて2部構成で開催。その様子をお届けします。<第2部>


第2部のテーマは「地域福祉の担い手を拡げる」。桃山学院大学名誉教授の石田易司さんを講師・コーディネーターに迎え、多様な担い手が活躍する3つの実践報告を通して、新たな担い手の参画について考えを深めました。

▲ご登壇いただいた皆様

家族のサイズが小さくなり、ご近所のつながりが希薄化する中で、家族だけでは解決できない「困りごと」があっても、外からは見えにくい状況があります。そのような中、専門的な支援を担う福祉業界は「人材不足」の悩みを抱え、同時に、地域で活動する団体もまた「担い手の固定化・減少」が大きな課題となっています。

桃山学院大学の石田易司(やすのり)名誉教授は、「担い手」をどのように見つけるか、「担い手」にも喜んでもらえる取組みはどのように創ることできるのかと問いかけ、さまざまな「担い手」とつながり、力を引き出す、もしくは、自分自身が新たな「担い手」となっている人たちの実践報告へとつなぎました。

▲左から、石田名誉教授、北田さん、西川さん、吉見さん


【報告1】障がい者事業所による高齢者宅への配食と地域への交流について NPO法人カフェミロー(西区)

就労支援B型の事業所「カフェミロー」は今年で設立18年目。約40人のなかまがパンや弁当づくり、高齢者への配食、リサイクル商品の販売や古紙回収などの仕事を通じて地域に貢献しています。例えば、重度知的障がいのあるなかまAさんは、認知症で一人暮らしの高齢女性に弁当を配達。「徘徊を心配して『あかんやろ』とおばあさんを怒ることもあるけど、おばあさんはAさんの名前だけは忘れず、Aさんのために帽子を編み、二人は心を通わせていました。Aさんは、おばあさんを支える役割を果たしていたのです」と管理者の北田裕子さん。障がい者は支援を受けるだけでなく、提供する側にもなれることを示唆しました。

同団体の合言葉は「思いやりのある心」。「思いやる=認めてもらえる」経験を繰り返しながら、集団で社会参加・地域交流へと活動を広げてきました。その結果、障がいがあっても、人とのつながりを通してできることが増え、地域のなかで認められる大切な「担い手」へと成長しています。


【報告2】NPO・団体・企業・事業所の交流・協働を生み出す取組み にしよどリンク(西淀川区)

西淀川区を中心に、NPO・企業等がつながる場「にしよどリンク」は、いろいろな人が集える交流の場として、西淀川区社協により平成28 年から開催されています。介護事業所、信用金庫など異分野の企業・団体が「地域とつながり一緒に何かしたい」想いで2か月に1度集い、業務や活動の30分プレゼンテーションや意見交換を重ね、さまざまなコラボ企画を生み出しています。「企画・運営委員が内容や進行も含め、事前会議をおこない、主体的に運営しています。事務局は、メンバーの思いを大切に支援しています」と区社協地域支援担当主査の西川博子さん。

企画・運営委員の一人、入浴サービス株式会社ケアフル事業部課長・吉見浩一さんは、「にしよどリンク」で刺激を受け、花見や盆おどりなど地域のイベントでの「出張足湯」を実施。「活動前までは、地域のことを全く知りませんでした。今やどこにいっても『今日は足湯ないの?』と声をかけられます」と楽しそうに話します。「にしよどリンク」は吉見さんにとって、家、会社に次ぐ「サードプレイス」になっているようです。


【報告3】地域と専門学校が取り組むこどもの居場所 子ども未来食堂/のびのび学習室(東淀川区)

豊里南地域の「子ども未来食堂」は平成28年11月に発足。立上げメンバーの松田真魚(まお)さんは、地元で行きつけのMORICAFE店長の矢森さんから「一緒にやりませんか?」と誘われて活動を始めました。地域の人たちのネットワークをつなぎ、多様な地域資源を活用し、年に数回開く食堂は、各回100人を超えるこどもでにぎわうように。松田さんは、周知チラシのイラスト作成でも力を発揮しています。

「子ども未来食堂」から、派生的に生まれたのが学習に特化した週1回の「のびのび学習室」です。運営者の地域活動協議会生涯いきいき部会部会長の乗上永枝(のりかみひさえ)さんは「すでに信頼があった『子ども未来食堂』とつながることで参加者が増えました」。さらに自ら働きかけることで新たな「担い手」もゲット。「学習室で『軽食を出したい』という話をしたら、学習室に来ているこどものおばあさんが『手伝おうか』と申し出てくださいました」。

勉強を教える「担い手」は、日本メディカル福祉専門学校の学生です。同校教員の黒田将史さんは「学生に実践の場を与え、学びを形にすることができました」と地域に感謝し、学生の小林遼河さんは「一日の学習支援の流れ、運営方法に主体的に関われるおもしろさを感じています」とのこと。こどもたちの育ちの力になる一方で、「担い手」側にも喜びがあり、学校と地域は「win‐win」の関係を築いていました。

▲左から、乗上さん、松田さん、黒田さん、小林さん


■ いろんな人と一緒にやれば新しい発想が生まれる

石田先生は、報告を踏まえた「担い手」を見つけるポイントとして、「積極的に自分から働きかけること。声をかけてもらえれば、『やってみようか』という人がいるはず」と伝えました。

石田先生から登壇者のみなさんへ、「後継者をどのように考えているか」と投げかけると、みなさんはまだ具体的に考えが及ばないとのこと。

「多くの活動団体は、団体を立ち上げた時、そのうちに活動できなくなることは想像できません。今は、代表ひとりだけで解決できることも、そのうちに無理が生じてきます。自分ができないことを代わりにやってもらえる。あるいは、自分と一緒に協働してもらえる人を探す。組織、個人、障がいのある人・・・いろんな人が一緒になってやったら、新しい発想が生まれてくる。それが地域福祉の原点だと思います。担い手のみなさんには、現在の運営と同時に、次世代へどう引き継ぐかについても考えてもらえたらよりよい活動になると思います」と締めくくりました。


*この記事は「大阪の社会福祉」第763号(平成30年12月号)掲載記事に基づき作成しています。

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