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地域福祉シンポジウム 開催レポート〈第1部〉

市社協では年1回、「地域福祉シンポジウム」を開催しています。今年度は、平成30年9月23日、大阪国際交流センターにて2部構成で開催。その様子をお届けします。<第1部>


第1部のテーマは「防災は自助・互助・協働のまちづくり」。朝日放送のお天気キャスターでおなじみの正木明さんによる講演と、ボランティア、民生委員・児童委員、社協職員等による活動を報告し、被災地支援や防災のあり方について考えを深めました。

▲市民・福祉関係者ら約500人が参加


【講演】 天気予報は、命を守る防災情報

正木明さんは、近年の異常気象をふまえ「天気予報は生活情報ではなく、命を守る防災情報という意味合いが濃くなっている」と指摘しました。スクリーンに映し出された当日の天気図を「生」で解説しながら、天気図を十分活用するため「天気マークや数字の意味を知った上で使う」「率先して最新情報にアクセスする」というポイントを伝えました。

▲正木明さん

情報をうまく使い、自分の身を守る自助、そして、共助を強める方法として「防災訓練・避難訓練への参加」が有効であると話し、訓練に参加する時間がない場合は、家庭で「災害が起きたらどうする?」と会話をするだけでもいいとアドバイス。災害が起きた時は、高齢者、障がい者、外国人など「情報を得る手段が少ない人と情報を共有することで共助につなげてほしい」と語り、被災地支援の生の情報を聞く機会は貴重であると、次の活動報告へとつなぎました。


【報告1】 被災者のニーズとボランティアの想いをつなぐ(市社協)

災害時、社協は災害ボランティアセンターを設置・運営し、災害による住民の困りごと(ニーズ)とボランティアの想いをつなぐ役割を果たしています。

社協が災害ボランティアセンターを運営する理由について、市社協の秋田大輔課員は「ボランティア、NPO、企業、社会福祉団体、行政など、多様な関係機関と平時からのつながりがある」「中長期的な視点を持って被災者と関われる」「全国ネットワークがあるのでどこで災害が発生しても対応できる」と述べ、被災地支援における社協の強みを示しました。

大阪市内の区社協でも、6月の大阪北部地震の際に、地震によって困りごとを抱えた人がいないか、困りごとの相談受付のチラシをポスティングするなど、住民の声に耳を傾けました。7月の西日本豪雨では、市社協として、早期に広島、岡山へ先遣隊を派遣し、地元社協のみの対応では難しいことや不安を抱える住民感情の情報を集めました。このほか他社協との協力によるボランティアバスの運行などの取組みを報告。最後に「災害への取組みは、社協だけでできるものではなく、平時のつながりを活かして、いろいろな方の力を借りる必要がある」と協力を呼びかけました。


【報告2】今の時代に合った近所づきあいを(ボランティア)

八多秀美さんは紀伊半島豪雨(平成23年)の災害支援ボランティア活動にも参加。その際は、自家用車での移動で不安な気持ちもあったという。今回の倉敷市での支援活動は、「ボランティアバスは、日帰りなので子どもがいても無理がない。経済的負担も軽い。現地に行く手段がない人、一人では躊躇する人に勧めたい取組み。参加者同士のつながりや次のボランティア活動のきっかけもできてよかった」と語ります。

大阪でも北部地震が発生し、台風21号が上陸し「他人事ではない気持ちが強まりました。淀川沿いで被災した友人から『堤防の決壊は想定外だった』と聞き、想定外を想定して身を守ることが大事だと感じた」と話します。

被災地の様子をみて「災害が起きた時に助け合えるのは、隣近所の人たちだと知った。今の時代にあった近所づきあいを考えていきたい」と締めくくりました。


【報告3】災害時対応には、日頃からの取組みが重要(民生委員)

大阪北部地震発生時、浪速区では区社協と民生委員・児童委員が連携し、「災害時要援護者名簿」にそって安否確認をおこないました。この名簿は区社協(見守り相談室)により、自力避難が困難な人の同意を得て作られており、浪速区では各地区の民生委員・児童委員一人ひとりに配付されています。

浪速区民生委員児童委員協議会副会長の阪中雅博さんは、地震が発生した6月18日の様子について「午前に区民生委員児童委員協議会、区役所から要請があり、私の地区では民生委員・児童委員が要援護者名簿に記載された146人に安否確認をおこなった。その日の17時には66%にあたる89人の方の確認を終え、翌19日には区社協の協力もあり、ほぼ100%確認。区全体では19日の11時30分に81.4%の要援護者の安否確認を終えた。災害時の安否確認、避難場所誘導の声かけなど防災体制が構築されていたおかげで迅速に対応できた」と日常の取組みの重要性を強調。「日頃から、気づく・つなぐ・話し合える地域をつくりたい」と語りました。


【報告4】「災害対応ニーズ」から「生活支援ニーズ」へ(区社協)

岡山市東区の災害ボランティアセンターは、ニーズ班、マッチング班、資材班などの複数班で編成。大阪市社協・区社協からの派遣職員はニーズ班に配置され、住民の相談窓口となりました。そのうちの一人、大正区社協の西上住遠さんは「難しいのは相談者の不安内容を見極めること。災害に関係なく、買い物に困っていたり、体調不良だったりする人もいる。一度相談した人に電話やポスティングで新しいニーズがないか確認することで、高齢者や障がい者に限らず、日頃の生活課題が浮き彫りになった」と報告。

また、初動期には家屋や庭の泥のかきだしなどが主な活動でしたが、そのうち家電の購入や、日々の買い物での支援などこれまでの生活を取り戻すためのニーズが増えてきました。

「社協だからこそ、生活全般の相談に乗れるという強みを感じた」と西上さん。生活支援ニーズに対応するしくみを事前に構築すれば、「災害対応ニーズ」から「生活支援ニーズ」への切り替えがスムーズだと具体的な課題を挙げました。


■ 想定外のことも想定した災害に強いまちづくり

正木さんは「防災士の立場としては、事前に参考となる情報をいかに伝えていくかを一番大切に考えてきたが、今のお話を伺うと、被災後に現場に救援・救護に行かれる方々に対しても、気象情報などが必要だと改めて感じた」、「八多さんの言葉『想定外のことを想定する』が印象に残った。天気予報も想定外の事例が増えている。想定外のことが起きた時にどうするのか、という考えを防災に加えていかなければならない」と語りました。

近い将来、南海トラフ巨大地震が起こる確率は極めて高いと予測されています。各自が気象情報で正確な情報を得るなどで自助の力を高めると同時に、初動時を乗り越えるために不可欠な隣近所との助け合い、生活支援ニーズがあらわれる段階における柔軟な体制づくりなど、互助の力をつけ、地域で協働していくことが、災害に強いまちづくりにつながるのではないだろうかと第1部が締めくくられました。

▲登壇者の皆様


*この記事は「大阪の社会福祉」第762号(平成30年11月号)掲載記事に基づき作成しています。

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