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【連載】コロナの中で⑤コロナ禍で問われる共生ーひたすらなるつながりのために、学びを止めないー

このコーナーでは新型コロナウイルスの影響下において地域福祉に関わるさまざまな「人」に焦点を当てて、インタビューを通して、その人ならではのストーリーや思いに迫ります。


コロナ禍で問われる共生 -ひたすらなるつながりのために、学びを止めない-

▲プロフィール:1974年、大阪市立大学大学院修士課程修了。常磐会短期大学、桃山学院大学、同志社大学で約45年に渡り教鞭を取ります。昨春、同志社大学名誉教授に就任。日本地域福祉学会、日本福祉教育・ボランティア学習学会等の会長職を歴任し、現在、大阪市ボランティア・市民活動センター所長。『共生社会創造におけるソーシャルワークの役割』(2020)など著書多数。自他ともに認める「社会福祉実践大好き研究者」です。


実践とともに歩んだ研究者生活

大阪市立大学で社会福祉を学んだ上野谷加代子所長。研究者になってからは、子育てと研究を両立し、多忙な中でも、年1本は論文を書くことを自身に課し、日本の地域福祉研究において顕著な成果を残しています。「1979年に、在宅寝たきりの高齢者の訪問ケアについて、看護師とソーシャルワーカーの連携を分析しました。事例を集めるために、地域を回って、一軒一軒訪問して…昔から、そういうやり方が好きでしたね」。2020年3月、上野谷所長は大学を退職しました。2月末の最終講義には、全国から上野谷所長を慕う人たちが聴講に訪れ、華々しく送り出されました。まもなく、新型コロナウイルスが世界中で猛威を振い、4月には1回目の緊急事態宣言が出されました。

▲市・区社協の若手職員学習会でも講 師を務めています(画面左上)。今年度はオンラインで開催しました。


突きつけられた差別・偏見が残る現実

現在、大阪市ボランティア・市民活動センターの上野谷所長に、感染が拡大する中で、最初に考えたことを聞いてみました。「これは問われる、と思いましたね」───これまでの人類の歩みやおこなってきた営みを、新型コロナウイルスによって問われると感じたそうです。

そして、コロナ禍で、地域社会の中で「差別」や「偏見」が解消されていないことを突き付けられました。福祉教育に力を注いできた分、そのショックは大きいものでした。

そんな中でも、できることを続けます。全国区で活躍する上野谷所長は、あるときは講演会の講師として、あるときは福祉専門職向け研修の総合プロデューサーとして、滋賀県、長野県、栃木県などの学びと実践の場へ赴きました。これはコロナ禍でも変わりませんでした。

「人が好き」という上野谷所長は、退職前から一貫して「福祉人づくり」、とりわけ専門職の養成に力を入れています。「住民が力を発揮するには、住民に任せるだけでは難しい。一生懸命活動をしていても、ときに住民同士の間で“排除”が起こることもある。だからこそ、知識と技術、価値・倫理に加えて、生活課題を解決する方法を持つソーシャルワーカーを育てることにこだわっている」。コロナ禍でも学びを止めません。研修は「できないじゃなくて、どうやってするか」と力強く語りました。


「助けられ上手」になることから

「不要不急って何でしょうね?暮らし人の視点に立つと、要らないものなんて何もない」と上野谷所長。この状況下で、地域の活動に関わる住民と専門職、それぞれに戸惑いがあるが、「そこは分けて考えた方がいい」と語ってくれました。「コロナ禍で、地域住民やボランティアが集まることをどう判断するかということと、専門職として事業をどのようにおこなうかは別問題。医療の専門家からも学びながら、『感染しないように活動するにはどうすればいいか』を具体的にイメージできるように示すこと。住民の不安も配慮しつつ、正しく恐れ、工夫しながら粛々とできることをやるという覚悟を持ってほしいと思います」。

上野谷所長は「助け上手・助けられ上手」という言葉をモットーにしています。「人間ひとりでは何もできないことを実感することが大事。人に頼んだり、教えてもらったりすることの繰り返しで、関係が生まれ、地域共生社会が紡がれていきます。コロナ禍では、できることをいろいろと試しながら、今まではできなかった変化を起こす機会にしてほしい」。

先行きが不透明な中、一生懸命な人たちに、エールを送る上野谷所長。

「助けられ上手になって欲しい。ひたすらなるつながりのために」

▲10月の赤い羽根共同募金街頭募金では、先頭に立って募金者に声をかけ、お礼を伝えました。(中央)


本記事は、「大阪の社会福祉」第789号(令和3年2月発行)の掲載記事をもとに作成しています。

(担当:地域福祉課)

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