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【連載】コロナの中で③弱っている人を真っ先にーなんでも相談役を引き受けるー

このコーナーでは新型コロナウイルスの影響下において地域福祉に関わるさまざまな「人」に焦点を当てて、インタビューを通して、その人ならではのストーリーや思いに迫ります。


弱っている人を真っ先にーなんでも相談役を引き受けるー

▲プロフィール: 平成4年、初代ネットワーク推進員に就任以来、さまざまな居場所づくりに携わっている。ヘルパー、子育て支援サポーター、笑いヨガリーダーやコグニサイズ、シナプソロジーのインストラクターの資格取得者。夫と2人暮らし。


高齢者の多い地域を居場所づくりで明るく

松下由佳子さんが、ネットワーク推進員(現・地域福祉サポーター)として活動を始めたのは28年前。引っ越して数年が経ち、小中学校のPTA役員を通じて、地域のことが少しわかってきた頃でした。

引っ越してきた当初「高齢化率が高く、少しさみしいところだな」と感じた松下さんにとって、高齢者に対する相談業務や居場所づくりは、まちを明るくできるという意味でもやりがいのある活動でした。

年々、松下さんの活動の幅は広がり、現在、東田辺会館を拠点に、ふれあい喫茶、食事サービス、なかよし食堂(こども食堂)、親子サロン、健康づくり教室、だいじょうぶネット(認知症の人の介護家族の会)など、数多くの事業に携わっています。


コロナ禍だからできることがある

新型コロナウイルス感染を防ぐため、早いものでは3月から活動がストップしました。「これまで続けてきたことが全部覆され、手も足もでないと感じました」。しかし、松下さんは「今だからできることを」と気持ちを前向きに切り替え、事務員とともに、ウイルスを掃き出すように、会館にある椅子、網戸、サッシを洗い、倉庫内を整理し、不要なものを処分していきました。

緊急事態宣言が解除された5月下旬、会館には、外出できず弱っていく高齢者や、家に閉じこもり子育てに疲れた母親の情報が次々と入ってきます。自粛生活も限界、待ったなしでした。松下さんは事業再開の形をひたすら考え、相談し、何度も町会長会議で意見を求めました。

いち早く6月から再開したのが、だいじょうぶネットです。「認知症の方を介護する人の精神的なサポートは必須。重くて先の見えない介護の不安やストレスで命の危険も…」という危機感からでした。

▲認知症の人の介護家族の会「だいじょうぶネット」は6月から再開

その後、感染リスクに配慮しながら他の活動も7月から徐々に再開。松下さんは弱っている人に対し真っ先に手を差し伸べます。健康づくり教室は、年配者から順に声をかけました。高齢者宅への訪問活動でも、町会長とともに心配な人をピックアップして訪問し、区社協が準備したマスクとタオルのセットを渡しました。町会長の訪問はサプライズだったようで「町会長さんがわざわざ来てくれたと、ひどく感激されました」と話します。

▲健康づくり教室はコグニサイズやシナプソロジーの資格が活かせます(コロナ前の様子)

お茶と昼食を提供していたふれあい喫茶はランチ限定の予約制に、食事サービスは市・区社協の外出自粛高齢者・障がい者等見守り支援事業による配食弁当を利用して「持ち帰り」「会食」の選択性に。なかよし食堂は開かず、食品や寄附で購入したお菓子などの中から好きなものを持って帰ってもらうなど、居場所の特性に合わせて「3密」を避けました。今後は、コロナ感染状況をみながら、なかよし食堂を再開するか思案中です。

▲大賑わいだった「なかよし食堂」 も、現在は調理や会食を見合わせています。その間ボランティアの気持ちが途切れないように、経過や今後の見通しを共有しています


困りごとも、楽しい企画も

地域に密着した活動を長年続けていくうちに、学校から商店街までネットワークが広がり、困りごとも、楽しい企画も、「何かあったら松下さん」とすっかり地域の顔になりました。「連合町会長に『電話番でいいよ』と頼まれ気楽に参加したのに、こうなるなんて思ってもみませんでした」と驚いています。

健康づくり教室などで松下さんを勇気づけるのは、20年来の付き合いになる80~90歳代の女性3人組がまだまだ元気なことです。「どこにでも顔を出されるし、『松下さんに言われたから』とコロナ禍であっても散歩を欠かされません。言った本人は、さぼっているので焦りますね…」

松下さんは、励まし、励まされる関係が実感できるこの地域とともに、成長しながら歳をとると決めています。


本記事は、「大阪の社会福祉」第787号(令和2年12月発行)の掲載記事をもとに作成しています。

(担当:地域福祉課)

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